以前、手当の額を増額する改正で、それを遡及適用している条例を見かけ、いかがかと思ったことがあるが、同じように感じる人はいるようで、裁判で問題となっている事例がある。その結果は、適法とされている。
最高裁判決平成5年5月27日は、条例に基づかずに職員の給与の昇給等をさせる特別調整を行い、その後に改正された条例において特別調整の根拠となる規定を設けた上、既に改正前の条例に基づき行われた支給を、改正後の条例の規定による給与の内払いとみなす旨を定めたことについて、議会は、改正条例の制定によって、当該特別調整を是認し、遡って適法としたものと解するのが相当であると判断したとのことである*1。
こうした取扱いは、給与条例主義との関係では、事後的ではあるが、民主的統制の要請を一応満たしており、職員に不利益をもたらすものではないため、遡及的追認は許容されると解されている*2。
しかし、そもそもなぜこうしたことが起こるのだろうか。職員の給与制度に対する理解不足ということしか考えられないが、そうであれば、議会の議決も、それが法的にどういう意味を持つか理解した上で行われているのか甚だ疑問が残るところである。