自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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条例立案時における憲法適合性及び法律適合性への配慮(4)

4 まとめ

 今回、条例の憲法適合性及び法律適合性について風営法に関する判例を題材にして取り上げてみた。

 同一の法律に基づく複数の判例を取り上げたのは、判例によって異なった判断がなされているかどうかを確認するのが主眼であった。

 この点、条例の憲法適合性について裁判所がどのような判断するかについては、当事者の主張に左右する面が大きく、判例の傾向といったことまで確認するところまではいかなかった。判例の考え方を示すには、さらに多くの判例に当たる必要があると感じた。

 条例の法律適合性については、一見すると同一の判断がなされると思われる事案であっても、異なる判断がなされることが見受けられた。これは、千葉勝美元最高裁判事がその著書『憲法判例と裁判官の視線』(P18)で裁判官の思考方法の特徴を次のとおり述べているが、裁判所が結果の妥当性から一定の結論を導いていることによるものと考えられる。

 そもそも法的判断を行う場合、まず一般法理を定立し、それに事実を当てはめて最終的な法的結論を導き出すという三段論法的な思考方法に関しては、学者においては当然であろうが、裁判官においては、これと異なるものである。すなわち、裁判官は、法理がまずあるのではなく、事実認定とそれを基にした最も適正な事案の解決は何かをまず直観的に(リーガルマインドにより)考え、次にそれを説明し得る法理や理論、解釈を採ることができるかを検証することにより裁判を行っているのであり、両者には基本的に異なる点がある。

 したがって、条例の適法性を確保するためには、当該条例制定の必要性を明確にすることが前提となる。つまり法律では解決できない事項を解決するため、条例で規制する必要があり、それが適切な手法によっているということが何より重要なのである。