自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

例規審査事務経験のある地方公務員のブログ。https://twitter.com/hotiak1

「県」とするのか「知事」とするのか

 法令において自治体について規定する場合、自治体(都道府県、市町村)とする場合と自治体の機関(知事、市町村長)とする場合がある(以下、前者については「県」、後者については「知事」として記載する)。

 このような書き分けがされるのは、行政の意思決定の主体として行政(官)庁という概念が用いられていることによるものであると思われる。特に機関委任事務があった当時は、この書き分けは重要であっただろう。

 しかし、機関委任事務が廃止された現在は、その書き分けはそれほど重要ではなくなっている。むしろ、ある事務について法律に「知事」と表記すると、当該事務については知事の専権事項であり、条例を定めることができないと解される可能性があるので、一般的には「県」と表記すべきということになるだろう。

 では、自治体が条例等で表記する場合にはどうだろうか。この点、国の場合は、地方公共団体と対比して用いる場合には「国」と表記し、行為主体を明確にする必要がある場合には「政府」などと表記するという基準があるようである*1。基本的にはこの基準によればいいのだが、行為主体を明確にする必要がある場合のほか、組織例規については機関名で表記するが、それ以外の場合は団体名で表記するということになるのだろうか。

*1:宇賀克也『次世代医療基盤法の逐条解説』(P62)参照