自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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元号法における昭和の位置付け

   元号法(昭和54年法律第43号)

1 元号は、政令で定める。

2 元号は、皇位の継承があつた場合に限り改める。

   附 則

1 この法律は、公布の日から施行する。

2 昭和の元号は、本則第1項の規定に基づき定められたものとする。

 元号法附則第2項が「とする」とされていることについて、倉山満『検証内閣法制局近現代史』(P188)には、その法の成立以前からあるものについては「である」にしなければいけないといった記載がある。

 しかし、ここで「である」とすることは適切とは思えないが、元号法の制定以降は、元号政令で定めることとするということであるから、そもそも昭和の元号について触れるべきではないのだろう。

 この規定を置いたのは、昭和の元号が無効だったというような議論にしないために置いたのだろうから、サラッと書いただけというのが実際だと思う。きちんと書くのであれば、元号の法的根拠が無くなった時期まで遡及適用し、「昭和の元号は、この法律に基づき定められたものとする」といった規定を置くのが本来だったのだろうが、そこまでするのは得策ではないという判断なのではないだろうか。

 

<2022.11.4追記>

 元号法附則第2項について、次のような国会答弁があることを御教示いただいた。

 昭和という元号は昭和22年の5月3日以後法令上の根拠がなくなって、事実上の慣習として用いられているにすぎない。ところで、この附則2項が仮にないといたしますると、本則の第1項で、この法律の施行後、早速にもまた政令元号を定めなければならないということに相なります。しかし、それは皇位の継承があった場合に限って定めるという条文とも問題が生じます。そこで、附則第2項を置きまして、この法律の制定、施行と同時に、新たに政令を定めるまでもなく、現在事実上の慣習として用いられている昭和がこの新法案の第1項に基づく政令で定められたと同じ効果があるよということを明定した規定でございます(第87回国会衆議院内閣委員会昭和54年4月11日真田政府委員答弁)。

 戦後、元号法の制定までの「昭和」の元号の根拠を事実上の慣習と考えるのであれば、同法の適用は「昭和」の次の元号からとした方が一貫していたと思う。