自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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カルト規制法

カルト規制法「容易でない」 公明・北側氏

公明党北側一雄中央幹事会長は15日の記者会見で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐる問題を受け、反社会的な宗教団体を対象とする「カルト規制法」制定の必要性を問われ、「議論するのは良いと思うが、具体的にどういう中身で法律を構成していくかは容易ではない」と述べ、実現は難しいとの認識を示した。

JIJI.COM 2022年9月15日配信

 カルト規制法が難しい理由としては、カルトの定義が困難であるということを聞く。

 規制対象を精緻に定義している例として、「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」に基づく指定暴力団を挙げることができると思う。同法の指定暴力団に関する規定は、次のとおりである。

 (定義)

第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 (1)  (略)

 (2) 暴力団 その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む。)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体をいう。

 (3) 指定暴力団 次条の規定により指定された暴力団をいう。

 (4)~(8) (略)

 (指定)

第3条 都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、暴力団が次の各号のいずれにも該当すると認めるときは、当該暴力団を、その暴力団員が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれが大きい暴力団として指定するものとする。

 (1) 名目上の目的のいかんを問わず、当該暴力団暴力団員が当該暴力団の威力を利用して生計の維持、財産の形成又は事業の遂行のための資金を得ることができるようにするため、当該暴力団の威力をその暴力団員に利用させ、又は当該暴力団の威力をその暴力団員が利用することを容認することを実質上の目的とするものと認められること。

 (2) 国家公安委員会規則で定めるところにより算定した当該暴力団の幹部(主要な暴力団員として国家公安委員会規則で定める要件に該当する者をいう。)である暴力団員の人数のうちに占める犯罪経歴保有者(次のいずれかに該当する者をいう。以下この条において同じ。)の人数の比率又は当該暴力団の全暴力団員の人数のうちに占める犯罪経歴保有者の人数の比率が、暴力団以外の集団一般におけるその集団の人数のうちに占める犯罪経歴保有者の人数の比率を超えることが確実であるものとして政令で定める集団の人数の区分ごとに政令で定める比率(当該区分ごとに国民の中から任意に抽出したそれぞれの人数の集団において、その集団の人数のうちに占める犯罪経歴保有者の人数の比率が当該政令で定める比率以上となる確率が10万分の1以下となるものに限る。)を超えるものであること。

  イ 暴力的不法行為等又は第8章(第50条(第2号に係る部分に限る。)及び第52条を除く。以下この条及び第12条の5第2項第2号において同じ。)に規定する罪に当たる違法な行為を行い禁錮以上の刑に処せられた者であって、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して10年を経過しないもの

  ロ 暴力的不法行為等又は第8章に規定する罪に当たる違法な行為を行い罰金以下の刑に処せられた者であって、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しないもの

  ハ 暴力的不法行為等又は第8章に規定する罪に当たる違法な行為を行い禁錮以上の刑の言渡し及びその刑の全部の執行猶予の言渡しを受け、当該執行猶予の言渡しを取り消されることなく当該執行猶予の期間を経過した者であって、当該刑に係る裁判が確定した日から起算して10年を経過しないもの

  ニ 暴力的不法行為等又は第8章に規定する罪に当たる違法な行為を行い罰金の刑の言渡し及びその刑の執行猶予の言渡しを受け、当該執行猶予の言渡しを取り消されることなく当該執行猶予の期間を経過した者であって、当該刑に係る裁判が確定した日から起算して5年を経過しないもの

  ホ 暴力的不法行為等又は第8章に規定する罪に当たる違法な行為を行い禁錮以上の刑に係る有罪の言渡しを受け、当該言渡しに係る罪について恩赦法(昭和22年法律第20号)第2条の大赦又は同法第4条の特赦を受けた者であって、当該大赦又は特赦のあった日(当該日において当該言渡しに係る刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなっている場合にあっては、当該執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日)から起算して10年を経過しないもの

  ヘ 暴力的不法行為等又は第八章に規定する罪に当たる違法な行為を行い罰金以下の刑に係る有罪の言渡しを受け、当該言渡しに係る罪について恩赦法第2条の大赦又は同法第四条の特赦を受けた者であって、当該大赦又は特赦のあった日(当該日において当該言渡しに係る刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなっている場合にあっては、当該執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日)から起算して5年を経過しないもの

 (3) 当該暴力団を代表する者又はその運営を支配する地位にある者(以下「代表者等」という。)の統制の下に階層的に構成されている団体であること。

 カルト規制法を制定しようとするのであれば、規制対象をこのように定義できるかどうかになるのだろうが、カルトの場合、民事においてトラブルを起こしている団体をどのように評価するかということになるのだろうから、一層難しいことになるのだろう。