自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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「……を含む」(上)

 法文では、ある字句に括弧を付けて「……を含む」と表記し、その字句に特定の範囲のものを含ませることがよくある*1

 令和4年1月19日に公布された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行令(令和4年政令第25号。以下このシリーズで「政令」という。)」においてこの用語が用いられているが、その用法で2点程気になるところがある。

 次の規定は、政令第14条の規定である。

 (認定自主回収・再資源化事業計画に係る再資源化に必要な行為の委託の基準)

第14条 法第41条第2項の政令で定める基準は、次のとおりとする。

 (1) あらかじめ、使用済プラスチック使用製品(廃棄物処理法第2条第4項に規定する産業廃棄物であるものに限る。次号イからハまでにおいて同じ。)を排出する事業者に対して、当該事業者に係る法第41条第2項に規定する行為を委託しようとする者の氏名又は名称(法人にあっては、その代表者の氏名を含む。)及びその者が認定自主回収・再資源化事業計画に記載されていることを示して、当該委託について当該事業者の書面(環境省令で定める事項が記載されたものに限る。)による承諾を受けていること。

 (2)・(3) (略)

 下線部のとおり、この規定では括弧書きで「法人にあっては、その代表者の氏名を含む」とされている。このような用例は幾つもあるのだが、結構いろいろな読み方ができる書き振りである。字面だけで考えると、「……委託しようとする者の氏名又は名称」というように「者」としているので、一応対象となるのは個人と法人であると考えることにする*2。そうすると括弧の直前の「名称」は「法人の名称」ということになるから、この括弧が「名称」に付されているとするとおかしな表現になるので、「氏名又は名称」に付されていると考えることになる。そうすると、法人の場合には、その名称か代表者の氏名を示せばよいことになりそうである。

 普通に考えるのであれば、法人の場合には「その名称及び代表者の氏名」を示すという意味なのであろうから、次のいずれかのように書くべきではないだろうか。

<案1>

氏名又は名称及び法人にあってはその代表者の氏名*3
<案2>
氏名(法人にあっては、その名称及び代表者の氏名)*4

 

*1:法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務(第2版)』P90参照

*2:ただし、法人格のない団体を含める例もある(「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」第4条第1項第1号参照)。

*3:国家戦略特別区域法第13条第2項第1号(氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名)参照

*4:特定非営利活動促進法第10条第1項第3号(社員のうち10人以上の者の氏名(法人にあっては、その名称及び代表者の氏名)及び住所又は居所を記載した書面)参照