自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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立入検査の規定雑感(上)

 次の規定は、森林病害虫等防除法(昭和25年法律第53号)第6条の規定である。

 (立入検査)

第6条 農林水産大臣又は都道府県知事は、森林病害虫等を駆除し、又はそのまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該官吏又は森林害虫防除員に、森林その他樹木が生育している土地、苗畑又は船車若しくは貯木場、倉庫その他指定種苗若しくは伐採木等を蔵置する場所に立ち入らせ、樹木、指定種苗又は伐採木等を検査させ、又は検査のため必要な最少量に限り、枝条、樹皮若しくは包装又は指定種苗を収去させることができる。

2・3 (略)

 森林病害虫等防除法第6条第1項の規定は、次のような構文の文章となっている。

 (1)「農林水産大臣又は都道府県知事は、」→(2)「森林病害虫等を駆除し、又はそのまん延を防止するため必要があると認めるときは、」→(3)「当該官吏又は森林害虫防除員に、」→(4)「森林その他樹木が生育している土地、苗畑又は船車若しくは貯木場、倉庫その他指定種苗若しくは伐採木等を蔵置する場所に立ち入らせ、」→(5)「①樹木、指定種苗又は伐採木等を検査させ、又は②検査のため必要な最少量に限り、枝条、樹皮若しくは包装又は指定種苗を収去させることができる。」

 (5)の部分は、大きく①と②に区切られるため、「又は」と「若しくは」の使い分けのルールからすると下線部の「又は」は「若しくは」とすべきとなる。

 立入検査の規定は、文章が長くなることが多いので、「又は」「若しくは」の使い方が誤っている例が散見される。

 次の規定は、国家公務員法(昭和22年法律第120号)の規定である。

 (人事院の調査)

第17条 (略)

② (略)

③ 人事院は、第1項の調査(職員の職務に係る倫理の保持に関して行われるものに限る。)に関し必要があると認めるときは、当該調査の対象である職員に出頭を求めて質問し、又は同項の規定により指名された者に、当該職員の勤務する場所(職員として勤務していた場所を含む。)に立ち入らせ、帳簿書類その他必要な物件を検査させ、又は関係者に質問させることができる。

④・⑤ (略)

 国家公務員法第17条第3項の条件句から後ろの文章は、「……出頭を求めて質問し」のところで大きく区切られるため、その直後が「又は」となり、下線部の「又は」は「若しくは」とすべきということになる。