自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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観光再興条例(上)

「観光再興条例」めぐり県議会審議進む

新型コロナの影響を受けている観光産業への支援について、県の責務を明記する新たな条例案が県議会で審議されています。

条例案は、新型コロナの影響を受けている観光関連事業者に対し、沖縄県が支援する責務を負うと明記するもので、自民、公明の2つの会派の21人が提出しました。

提出した議員らは、条例は支援に必要な予算を国から獲得する際に後ろ盾となるものとして早期の施行を求めています。

ただ、条例案は、業種を具体的に規定しない「理念条例」となっていて、県の執行部は対応に苦慮しています。

「宿泊業に納入している生産者、例えばそれが農業者という場合に、そこを観光関連産業と捉えるかは、個々に判断することになると思います」(宮城嗣吉部長)

県の執行部は、観光関連産業は裾野が広く、支援する事業者を線引きするのは複雑になるとして、与野党での慎重な審議を要望しました。

 一方で、観光業の支援に国の予算が確保できれば、既存の臨時交付金を医療人材の確保などに回すことができると期待する意見も出ていて、委員会では26日に採決が行われる見通しです。

琉球放送ホームページ2021年8月25日掲載

 上記の条例案は、次の「新型コロナウイルス感染症の影響を受けている観光産業の再興に関する条例案」であると思われる*1

   新型コロナウイルス感染症の影響を受けている観光産業の再興に関する条例

 (目的)

第1条 この条例は、新型コロナウイルス感染症が、特に、本県の基幹産業として極めて重要な地位を占め、県民生活の向上と県民経済の発展に大きく貢献している観光産業に深刻な影響を及ぼしていることに鑑み、新型インフルエンザ等対策特別措置法平成24年法律第31号。以下「法」という。)及び沖縄県新型コロナウイルス感染症等対策に関する条例(令和2年沖縄県条例第41号。以下「対策条例」という。)と相まって、新型コロナウイルス感染症に対する対策としての観光産業の再興に関する措置の強化を図ることにより、新型コロナウイルス感染症から県民の生命及び健康を保護し、並びに新型コロナウイルス感染症が観光産業に及ぼす影響、ひいては県民生活及び県民経済に及ぼす影響が最小となるようにし、もって観光産業の再興と安全安心の島沖縄(県民が安全に安心して生活し、及び経済活動を行うことができる社会をいう。)を実現することを目的とする。

 (定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

⑴  (略)

⑵ 観光関連事業者 観光に関する事業及び観光と密接に関連する事業を営む者をいう。

⑶ 旅客施設設置者等 旅客施設(公共交通機関を利用する旅客の乗降、待合いその他の用に供する施設をいう。以下同じ。)を設置し、又は管理する者をいう。

⑷ 観光関連事業者等支援施策 県民の生命及び健康を保護し、並びに新型コロナウイルス感染症が観光産業に及ぼす影響、ひいては県民生活及び県民経済に及ぼす影響が最小となるようにするため、新型コロナウイルス感染症が観光産業に及ぼす影響等に関する実態の把握、観光関連事業者及び旅客施設設置者等が実施する新型コロナウイルス感染症に対する対策に必要な支援その他の観光産業の再興に関し、県が実施する施策をいう。

 (県の責務)

第3条 県は、観光関連事業者等支援施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

2 県は、観光関連事業者等支援施策を総合的に策定するに当たっては、法の規定により作成された沖縄県行動計画及び対策条例の規定により作成された対処方針並びにこれらに基づく新型コロナウイルス感染症に対する対策との整合性の確保その他の必要な措置を講ずるものとする。

3 県は、観光関連事業者等支援施策を実施するに当たっては、情報通信技術の活用等を通じて、その的確かつ迅速な実施が図られるように配慮しなければならない。

4 県は、観光関連事業者等支援施策を実施するに当たっては、国、他の都道府県、市町村、大学等( 大学若しくは高等専門学校又はこれらに附属する研究機関等をいう。)、観光関連事業者及び旅客施設設置者等と連携協力し、その的確かつ迅速な実施に万全を期さなければならない。

 (県民、来訪者及び観光関連事業者等の責務)

第4条 県民、来訪者、観光関連事業者及び旅客施設設置者等は、新型コロナウイルス感染症の予防に努めるとともに、法及び対策条例に基づく新型コロナウイルス感染症に対する対策及び観光関連事業者等支援施策の実施に協力するよう努めなければならない。

2 観光関連事業者は、新型コロナウイルス感染症のまん延により生ずる影響を考慮し、その事業の実施に関し、適切な措置を講ずるよう努めなければならない。

3 旅客施設設置者等は、新型コロナウイルス感染症のまん延により生ずる影響を考慮し、その設置し、又は管理する旅客施設に関し、適切な措置を講ずるよう努めなければならない。

 (財政上の措置)

第5条 県は、観光関連事業者等支援施策を積極的に推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

 (その他の産業のための支援)

第6条 県は、この条例に定めるもののほか、県民の生命及び健康を保護し、並びに新型コロナウイルス感染症が県民生活及び県民経済に及ぼす影響が最小となるようにするため、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている本県の産業に対する支援の強化その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

 この条例案が目的としていることは、新型コロナウイルス感染症により影響を被っている観光産業に関し、「観光関連事業者等支援施策」(第2条第4号参照)を積極的に実施することにより、観光の再興を図るということではないかと思うが、コロナ対策に引っ張られていろいろ書いていくうちに、何を言いたいのかよく分からない条例になってしまっていると思う。

 この条例案の問題点と思われる事項について、次回に触れることにする。

*1:この条例案は、一部修正の上、8月31日に可決されている。