自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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目的規定(4)

 (2) 目的規定を書く際の留意事項

  ア 目的達成の手段を書く際の留意事項

 目的達成の手段を書く際には、条例で定めている事項をすべて網羅させることに留意する必要がある。

 次に掲げる目的規定は、「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」の目的規定である。

この法律は、食品循環資源の再生利用並びに食品廃棄物等の発生の抑制及び減量に関し基本的な事項を定めるとともに、食品関連事業者による食品循環資源の再生利用を促進するための措置を講ずることにより、食品に係る資源の有効な利用の確保及び食品に係る廃棄物の排出の抑制を図るとともに、食品の製造等の事業の健全な発展を促進し、もって生活環境の保全及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

 この規定で目的達成の手段を書いている部分は、「食品循環資源の再生利用並びに食品廃棄物等の発生の抑制及び減量に関し基本的な事項を定めるとともに、食品関連事業者による食品循環資源の再生利用を促進するための措置を講ずること」であるが、これがすなわちこの法律が規定している内容ということになる。

 具体的に目的規定を書く場合には、目的達成の手段で条例が定めている内容を網羅する必要があるから、条例で規定した事項を見て*1、漏れがないか確認することになる。当然、条例で定めている内容のすべてを書ききれない場合もあるが、その際は、瑣末な事項は、「等」でくくるなどすることになる*2

  イ 目的規定で用いている用語と他の規定で用いている用語との整合

 目的規定で用いている用語と他の規定で用いている用語とは、当然整合が図られている必要がある。

 次の規定は、「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」第9条第3項の規定である。

主務大臣は、第1項に規定する勧告を受けた食品関連事業者が、前項の規定によりその勧告に従わなかった旨を公表された後において、なお、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、食品循環資源の再生利用等の促進を著しく害すると認めるときは、食料・農業・農村政策審議会の意見を聴いて、当該食品関連事業者に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。

 上記の「食品循環資源の再生利用等の促進を著しく害すると認めるときは」のように、一定の規制権限を発動する場合に、行政庁なりが一定の事実等を認識することを要件とすることがあるが、この「食品循環資源の再生利用等」という文言は、「食品循環資源の再生利用並びに食品廃棄物等の発生の抑制及び減量」の略称であり*3、この言葉は、同法の目的規定に書かれている文言(「食品循環資源の再生利用並びに食品廃棄物等の発生の抑制及び減量に関し基本的な事項を定める」)と整合が図られている。

 この部分が、原課の案だと、条例の中で初めてお目にかかる文言であったりすることがよくあったものである。実際、どのような文言にするか結構悩む部分でもあるが、その時は、目的規定に書いてある文言を借りてきたりしたこともよくあった。

 通常は、アで記載したように、目的規定を書く際に実体規定の文言を参照することが多いと思うが、逆に実体規定の文言を書く際に目的規定の文言を意識することも必要であり、それにより、用語の整合がとれ、形式的にはきれいな条例になるのではないか思う。

*1:章の区分を設けたのであれば、章名も参考にすることになる。

*2:「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」の目的規定でいうと「事項等を定める」としたり、「措置等を講ずる」としたり、「講ずること等により」とすることになる。

*3:同法第3条第1項参照