法人企業統計調査規則第八条第一項に規定する調査票の提出期限の特例に関する省令(令和2年財務省令第55号)
(提出期限の特例)
第1条 法人企業統計調査規則(昭和45年大蔵省令第48号)第4条第2項に規定する年次別法人企業統計調査のうち、令和元年度下期調査における同規則第8条第1項の適用については、「令和2年9月30日」とする。
附 則
この省令は、公布の日から施行する。
第2条は?
『自治実務セミナー(2020年9月)』に次のような文章が掲載されていた。
……もう少し慣れたら、主語と述語が一致しているかをチェックしてみてください。審議会に関する例規案の中で、「会議は、委員長が招集し、議長となる」という案文をしばしば目にします。主語と述語の間の「、委員長が招集し」を取り払ってみてください。「会議は、議長となる」と、主語と述語が一致しておらず、誤っていることが分かります(この場合、「議長」の前に「その」を加え、「会議は、委員長が招集し、その議長となる」とするのが一般的です)。
上記の表現が一般的かどうか私は知らないが、「会議は、委員長が招集し、議長となる」という文章の「議長となる」には「委員長が」という言葉がかかっているので、「委員長が招集し」を取り払うのでなく、「会議は、委員長が……議長となる」という文章が良いか悪いか検証するべきだろう。
そこで「議長」の前に「その」を加えるのであれば、「会議は、委員長が……その議長となる」ということになるが、この「その」は「会議」を指すことになるので、「会議は、委員長が……会議の議長となる」という文章となり、結果として「その」を補っても適切な文章にはならないことになる。
仮に会議の招集とその議長について一文で書くのであれば、「会議」を主語にするのは無理であり、委員長を主語にして「委員長は、会議を招集し、その議長となる」とせざるを得ないと思うが、スタンダードな書き方は、次のように会議の招集とその議長については一文にせず、項を分けて書くなど別々の文章にするのではないだろうか。
日本年金機構法(平成19年法律第109号)
(理事会の会議)
第11条 理事会は、理事長が招集する。
2 理事長は、理事会の議長となり、会務を総理する。
3・4 (略)
5 定義規定の準用
次の規定は、「租税特別措置法施行令等の一部を改正する政令(平成27年政令第148号)」第1条の規定により租税特別措置法施行令に追加された規定である。
(未成年者口座内の少額上場株式等に係る譲渡所得等の非課税)
第25条の13の8 この条において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 振替口座簿又は株式等 それぞれ法第37条の14第1項に規定する振替口座簿又は株式等をいう。
(2) 金融商品取引業者等又は営業所 それぞれ法第37条の14第5項に規定する金融商品取引業者等又は営業所をいう。
(3) 未成年者口座内上場株式等 法第37条の14の2第1項に規定する未成年者口座内上場株式等をいう。
(4) 払出し時の金額又は基準年 それぞれ法第37条の14の2第4項に規定する払出し時の金額又は基準年をいう。
(5) 未成年者口座、未成年者口座開設届出書、非課税管理勘定、継続管理勘定、課税未成年者口座、課税管理勘定、未成年者非課税適用確認書又は未成年者口座廃止通知書 それぞれ法第37条の14の2第5項に規定する未成年者口座、未成年者口座開設届出書、非課税管理勘定、継続管理勘定、課税未成年者口座、課税管理勘定、未成年者非課税適用確認書又は未成年者口座廃止通知書をいう。
(6) 契約不履行等事由 法第37条の14の2第6項に規定する契約不履行等事由をいう。
2~16 (略)
17 第25条の13第2項から第4項まで、第6項、第7項、第10項、第11項及び第14項から第24項まで並びに第25条の13の2から前条までの規定は、法第37条の14の2の規定を適用する場合について準用する。この場合において、これらの規定中「非課税口座開設届出書」とあるのは「未成年者口座開設届出書」と、「非課税適用確認書」とあるのは「未成年者非課税適用確認書」と、「非課税口座異動届出書」とあるのは「未成年者口座異動届出書」と、「非課税口座移管依頼書」とあるのは「未成年者口座移管依頼書」と、「出国届出書」とあるのは「未成年者出国届出書」と、「非課税口座開設者死亡届出書」とあるのは「未成年者口座開設者死亡届出書」と、「非課税口座年間取引報告書」とあるのは「未成年者口座年間取引報告書」と読み替えるほか、次の表の上欄に掲げるこれらの規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする。
(表略)
18 第1項の規定は、前項において準用する第25条の13第2項から第4項まで、第6項、第7項、第10項、第11項及び第14項から第24項まで並びに第25条の13の2から前条までに規定する用語について準用する。
19~26 (略)
第18項の規定は、定義規定を準用するというあまり目にしない規定だが、用語を読み替える際に「第25条の13の8第1項第○号に規定する○○」とするのを避けることを意図したのだろう。
「準用」と言われればそれでいいようにも感じるし、「適用」ではないかとも感じるし、むしろ、次のように第1項を読み替える方法もあるような気がする。
18 前項の場合において、第1項中「この条」とあるのは、「この条並びに第17項において準用する第25条の13第2項から第4項まで、第6項、第7項、第10項、第11項及び第14項から第24項まで並びに第25条の13の2から前条まで」とする。
いずれにしろ、上記のような立法技術が一般化すれば、読替え規定を書くのがかなり楽になるだろう。
(このシリーズ終了)
4 定義規定を項で書くか号で書くか
総則規定として置かれる定義規定の書き方は、項で書く場合、つまり「この条例において「○○」とは、……をいう。」とするものと、号で書く場合、つまり「この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。」という柱書きを書き、次に各号を列記するものがある。
そして、項で書くか、号で書くかについては、明確な基準はないが、多くの用語を定義する場合は、号で書くことが多いとされており*1、一般的に定義する用語の数を基準と考えている。
しかし、法律の定義規定を見ると、号にするとその細分を用いる必要があるような場合には、定義する用語の数が多くても、項で書いているような感じがする。
例えば、佐藤達夫『法制執務提要』(第二次改定新版)には、次のように記載されている。
多くの用語を定義する場合には、「この法律において「何々」とは、「何々」をいう。」という規定を数項にわたつて並べることもあるが、これは、それらの各項の内容が複雑で、ただし書や各号がつくようなときに、特に意味のあるやり方であつて、通常は、次のような方式が用いられる。
(例1)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 国内 この法律の施行地をいう。
(2) 国外 この法律の施行地外の地域をいう。
(3) 居住者 国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいう。
(4) 非居住者 居住者以外の個人をいう。
(中略)
(47)還付加算金 国税通則法第58条第1項(還付加算金)に規定する還付加算金をいう。
(例2)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) 職員 常時勤務に服することを要する国家公務員をいう。
(2) 被扶養者 次に掲げる者で主として組合員の収入により生計を維持するものをいう。
イ 組合員の配偶者(届出をしていないが、事実婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)、子、父母、孫、祖父母及び弟妹
ロ 組合員と同一の世帯に属する三親等内の親族で前号に掲げる者以外のもの
(以下略)
前掲書は、号で書くことが原則としているが、複雑になるときは項で書く場合があるとしており、その例として号の細分を用いなければならない場合が挙げられており、基本的には同様の考え方であると思う。そうすると、例2の場合は、第2号で号の細分が用いられているので、項で書いてもいい事例と言えるだろう。
*1:大島稔彦『法令起案マニュアル』(P197)参照
3 定義規定を置く場所
2020年8月13日付け記事「定義規定(1)」でも記載したが、定義規定というものは、定義する用語の初出の箇所で括弧を用いて書かない限り、第2条にまとめて置くものだという意識がありがちである。
平成18年6月に公布された「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」に基づく認定こども園については、その基準を都道府県条例で定めることとされているため、同年12月にその基準を定めた条例が公布されていた中で、次のような条例があった。
- 第1条 趣旨
- 第2条 定義
- 第3条 認定基準→「○○の認定の基準は、別表のとおりとする。」として、具体的な定めは別表に譲る。
この条例では、実体的な部分は全て別表で規定しているから、別表の用語を第2条で定義していることになり、何となく違和感がある。
第2条以外で定義規定を置く例として、第1条で目的規定と一緒に定義規定を置いている例(2020年6月5日付け記事『目的規定(10)』参照)のほか、次のようなものがある。
1の給与法の規定は、給与条例の審査の際に見たときは、このような定義の仕方もあるのだと驚いたものであるが、法令文の平易化方策として実施しているものであろう*1。
では、別表の用語の定義だが、できる限り近くで定義するのが分かりやすいだろうから、別表に備考か注を付けて書くという発想になると思う。実際、このような例は、所得税法別表第2ほか相当数ある。
また、登録免許税法別表第1は、項に番号を付して号としているが、その号ごとに用語を定義しており、大きい表のようなときは、参考になるであろう。
(3) 定義すべき用語が適切でなかったと思われる事例
令和元年5月31日、「食品ロスの削減の推進に関する法律(令和元年法律第19号)」(以下「法」という。)(議員提案(衆法))が公布された。題名にも使われているが、「食品ロス」という言葉は、当然定義が必要なのだろうと思い確認したところ、次のとおり、定義されているのは「食品」という用語と「食品ロスの削減」という用語のみである。
(定義)
第2条 この法律において「食品」とは、飲食料品のうち医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第2条第1項に規定する医薬品、同条第2項に規定する医薬部外品及び同条第九項に規定する再生医療等製品以外のものをいう。
2 この法律において「食品ロスの削減」とは、まだ食べることができる食品が廃棄されないようにするための社会的な取組をいう。
法の本則を見ると、確かに「食品ロス」という用語は「食品ロスの削減」という形で用いられている。しかし、前文では、第1文で「我が国においては、まだ食べることができる食品が、生産、製造、販売、消費等の各段階において日常的に廃棄され、大量の食品ロスが発生している。食品ロスの問題については……」、第2文で「食品ロスを削減していくためには……」のように「食品ロス」という言葉で使われている。
また、「食品ロスの削減」という用語については、「……取組をいう」というように定義されている。「削減」という言葉に「取組」という意味まで含めることがどうかという疑問もあるのだが、そうしたことにより適切でない箇所も散見される。例えば、法には次の規定がある。
(消費者の役割)
第6条 消費者は、食品ロスの削減の重要性についての理解と関心を深めるとともに、食品の購入又は調理の方法を改善すること等により食品ロスの削減について自主的に取り組むよう努めるものとする。
(教育及び学習の振興、普及啓発等)
第14条 国及び地方公共団体は、消費者、事業者等が、食品ロスの削減について、理解と関心を深めるとともに、それぞれの立場から取り組むことを促進するよう、教育及び学習の振興、啓発及び知識の普及その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 (略)
(食品関連事業者等の取組に対する支援)
第15条 国及び地方公共団体は、食品の生産、製造、販売等の各段階における食品ロスの削減についての食品関連事業者(食品の製造、加工、卸売若しくは小売又は食事の提供を行う事業者をいう。第19条第1項において同じ。)及び農林漁業者並びにこれらの者がそれぞれ組織する団体(次項において「食品関連事業者等」という。)の取組に対する支援に関し必要な施策を講ずるものとする。
2 (略)
これらの規定は、「食品ロスの削減」に「取組」という意味を含めているので、「取組について……取り組む」という文章になってしまっている。
また、法には次の規定がある。
(表彰)
第16条 国及び地方公共団体は、食品ロスの削減に関し顕著な功績があると認められる者に対し、表彰を行うよう努めるものとする。
(実態調査等)
第17条 国及び地方公共団体は、食品ロスの削減に関する施策の効果的な実施に資するよう、まだ食べることができる食品の廃棄の実態に関する調査並びにその効果的な削減方法等に関する調査及び研究を推進するものとする。
(委員)
第23条 委員*1は、次に掲げる者をもって充てる。
(1)~(3) (略)
(4) 食品ロスの削減に関し優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する者
2 (略)
これらの規定も、「食品ロスの削減」という用語に「取組」という意味を含めない方が適切だろう。
思うに、「食品ロスの削減」という用語で定義するのでなく、「食品ロス」という用語で「まだ食べることができる食品が廃棄されること」といった定義を置けば、あえて「食品ロスの削減」について定義を置く必要はなく、その取組について言いたい場合には、「食品ロスの削減に向けた取組」といった形で使うのがよかったのではないだろうか。
今回は、今記載しているシリーズを中断して、話題になっている日本学術会議(以下「会議」という。)が推薦した会員候補のうち6人を菅政権が任命しなかったことを取り上げる。
日本学術会議法(以下「法」という。)第7条第2項は、「会員は、第17条の規定*1による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。」と規定しているが、問題となっているのは、会議が推薦した候補者を内閣総理大臣は全て任命しなければいけないか、つまり内閣総理大臣の任命は、会議の推薦に拘束されるかどうかである。
まず、法第7条第2項にある「基づく」という用語については、吉国一郎ほか『法令用語辞典(第9次改訂版』(P730)では「普通、根拠とする、基礎とする、原因とするの意味に用いられる」とされている。この意味からすると、会議が推薦しない者を任命することは当然違法となるが、会議が推薦した者を任命しないことが直ちに違法とは言えないことになる。
「基づく」という用語に関連して、法令用語に係る文献によく取り上げられる用語として「議に基づき」「議に付し」「議を経て」「議により」がある。これらは、合議体の機関の審議に付する場合に使用される用語であるが、その結果に審議を求めた執行機関が拘束される程度によって使い分けがされており、林修三『法令用語の常識』(P24)には次のように記載されている。
「議により」というのが拘束力が最も強く、この語が使われている場合は、執行機関は、原則として、完全に審議会の議決に法的に拘束されるものと考えてよいであろう。……その他の3つの用語は、大体において、「……の意見を聞き」とか、「……にはかって」というのと同様に、審議会の議決にそのままの形では法的には拘束されないものとみるのが妥当であろう(法令の規定に基づき、審議機関の議にかけた以上、その意見を、事実上尊重すべきは、もとより当然である。……ただ、この場合における事実上というか、道徳的・政治的の拘束力の強さが、どの程度に及ぶかということは、それぞれの法令の規定の趣旨に従って判断するほかない)。
これと同様に考えるのであれば、法的には、会議の推薦した全ての者をそのまま任命しなければいけないということにはならないだろう。
この点に関連して、日本国憲法第6条第1項で「天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。」とされている内閣総理大臣の任命について、天皇の行う任命が形式的であることから会議の会員も同様に考えるべきといった意見がSNS上で見られる。しかし、これは天皇は国政に関する権能を有しないことによるものと考えられ、会議の会員の任命と同列に考えることは無理があるだろう。
以上のとおり、私は、法的には会議の推薦した全ての者をそのまま任命しなければいけないということにはならないのだと思っている。会議の推薦した者をそのまま任命しなければいけないと主張する者は、過去の推薦された者をそのまま任用していくという国会答弁を理由にしているが、これは法律の解釈の問題というよりも、運用としてそのように取り扱っていくということなのではないかと思う。
ただし、会議の推薦を尊重する必要はあるので、政府は任命を拒否した理由を説明するのは当然であり、それが足りないのは事実だろう。