自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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法律における西暦表示(下)

2 海外における会議等の開催日・条約等の制定日等

 次は、国際連合総会の開催期日に西暦を用いている例である。

   津波対策の推進に関する法律平成23年法律第77号)

 (津波防災の日

第15条 (略)

2 (略)

3 国及び地方公共団体は、2015年12月22日国際連合総会において11月5日を世界津波の日とすることが決議されたことも踏まえ、津波防災の日には、津波対策に関する国際協力の推進に資するよう配慮しつつ、その趣旨にふさわしい行事が実施されるよう努めるものとする。

 個々の国際連合総会を特定するための開催期日を西暦表示するのは、ルール化されているようである。

 次のように条約が採択された日等について、西暦を用いている例もある。

   旧2005年日本国際博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法(平成14年法律第19号)

 (目的等)

第1条 (略)

2 この法律において「国際博覧会条約」とは、1988年5月31日に総会において採択された1928年11月22日国際博覧会に関する条約(1948年5月10日、1966年11月16日及び1972年11月30日の議定書並びに1982年6月24日の改正によって改正され及び補足されたもの)の改正による改正前の1928年11月22日にパリで署名され、1948年5月10日、1966年11月16日及び1972年11月30日の議定書並びに1982年6月24日の改正によって改正され及び補足された国際博覧会に関する条約をいう。

 上記のように、海外で起こった事実に関する表記は西暦を用いることがあるが、次のように元号を用いている例もあり、一貫していないようである。

   旧平成13年9月11日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応 して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法(平成13年法律第113号)

 (目的)

第1条 この法律は、平成13年9月11日アメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃(以下「テロ攻撃」という。)が国際連合安全保障理事会決議第1368号において国際の平和及び安全に対する脅威と認められたことを踏まえ、あわせて、同理事会 決議第1267号、第1269号、第1333号その他の同理事会決議が、国際的なテロリズムの行為を非難し、国際連合のすべての加盟国に対しその防止等のため に適切な措置をとることを求めていることにかんがみ、我が国が国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取組に積極的かつ主体的に寄与するため、次に掲げる事項 を定め、もって我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的とする。

 (1)・(2) (略)

3 その他

 次は、「〇〇年代」という形で用いている例である。

   所得税法等の一部を改正する法律(平成21年法律第13号)

   附 則

 (税制の抜本的な改革に係る措置)

第104条 政府は、基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引上げのための財源措置並びに年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の見通しを踏まえつつ、平成20年度を含む3年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする。この場合において、当該改革は、2010年代(平成22年から令和元年までの期間をいう。)の半ばまでに持続可能な財政構造を確立することを旨とするものとする。

2・3 (略)

 これは、わざわざ用語を定義する形で用いている。「〇〇年代」という用語を用いなくても表現できるのだが、その用語を使いたかったということなのだろうか。

 また、次のような例もある。

   地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号)

 (基本理念)

第2条の2 地球温暖化対策の推進は、パリ協定第2条1(a)において世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏2度高い水準を十分に下回るものに抑えること及び世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏1.5度高い水準までのものに制限するための努力を継続することとされていることを踏まえ、環境の保全と経済及び社会の発展を統合的に推進しつつ、我が国における2050年までの脱炭素社会(人の活動に伴って発生する温室効果ガスの排出量と吸収作用の保全及び強化により吸収される温室効果ガスの吸収量との間の均衡が保たれた社会をいう。)の実現を旨として、国民並びに国、地方公共団体、事業者及び民間の団体等の密接な連携の下に行われなければならない。

 この規定は、2020年10月26日、第203回臨時国会において菅総理から「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことが宣言されたことを受け、令和3年法律第54号により追加された規定である。西暦とする必要性は全くないと思うが、対外的なアナウンスを考慮したということだろうか。