自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

例規審査事務経験のある地方公務員のブログ。https://twitter.com/hotiak1

一部改正例規を改正する例規の立案等~改正規定の特定を中心として(12)

 (3) 改正規定の特定雑件

  ア 条の移動と追加が混在する事例~あるサイトで取り上げられていた事例

 例えば、次のような一部改正条例と附則があったとします。

 

 第5条中「○」を「×」に改め、同条を第6条とし、同条の次に次の1条を加える。

第7条 ……

   附 則

 この条例は、公布の日から施行する。ただし、第6条の次に1条を加える改正規定は、平成22年4月1日から施行する。*1

 

 改め文の本則中「同条の次に1条を加える。」とした改正規定を附則の中で、「第6条の次に1条を加える改正規定」と引用しています。

 これは「第5条の次に1条を加える改正規定」ではないのかな??との指摘を受けたのですが、どうなのでしょうか?

 一般的に改正規定を特定する場合には、改正前の規定をとらえて表現するので、「第6条の次に1条を加える改正規定」という特定の仕方はないのではないかと思っていたが、そうでもないようである。例えば、次のような用例がある。

   中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律の一部を改正する法律(平成19年法律第127号)

    (略)

 第14条を第17条とし、同条の次に次の1条を加える。

 (事務の区分)

第18条 (略)

    (略)

   附 則

 (施行期日)

第1条 この法律は、平成20年1月1日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、それぞれ当該各号に定める日から施行する。

 (1) 第14条を第17条とする改正規定及び第13条の次に3条を加える改正規定(第16条に係る部分に限る。)並びに附則第5条、第7条及び第8条の規定 公布の日

 (2)・(3) (略)

 (4) 第17条の次に1条を加える改正規定及び第13条の次に3条を加える改正規定(第14条に係る部分に限る。)並びに次条から附則第4条まで及び附則第6条の規定 平成20年4月1日

 この用例では、第14条を第17条とし、その次に第18条を追加している改正について施行期日を書き分けているが、後者について附則第1条第4号において「第17条の次に……」と特定している。

 これは、第18条を追加する改正規定の施行期日が、第14条を第17条とする改正規定の施行期日よりも後であるため、旧第14条は第18条を追加するときには既に第17条になっているので、これでもいいということかもしれないが、気持ちの悪さは残ってしまう。

 ところで、条の語句の改めとその条の移動がある場合の特定の仕方については、次のようにする場合が多いように感じる。

   郵便貯金法の一部を改正する法律(平成6年法律第72号)

   (略)

 第66条の2中「及び前条」を「、第66条及び前条第2項」に改め、同条を第66条の3とし、第66条の次に次の1条を加える。

第66条の2 (略)

   附 則

 (施行期日)

第1条 この法律の規定は、次の各号に掲げる区分に従い、それぞれ当該各号に定める日から施行する。

 (1)~(3) (略)

 (4) 第66条の2の改正規定、同条を第66条の3とし、第66条の次に1条を加える改正規定及び第67条の改正規定並びに附則第4条の規定 公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日

 そうすると、上記の事例の改正規定は、「第5条の改正規定」と「第5条を第6条とし、同条の次に1条を加える改正規定」というように特定することになる。

 そして、条の移動の部分とその条の次に条を追加する部分とで施行期日を書き分けた例として、次のような用例がある。

   沖縄振興開発特別措置法の一部を改正する法律(平成10年法律第21号)

    (略)

 第18条の2を第18条の7とし、同条の次に次の1条を加える。

 (輸入品を携帯して出域する場合の関税の払戻し)

第18条の8 沖縄から出域する旅客が個人的用途に供するため空港内の旅客ターミナル施設(沖縄開発庁長官が関係行政機関の長と協議して指定する部分に限る。)において購入する物品で当該旅客により携帯して沖縄以外の本邦の地域へ移出されたものについては、関税暫定措置法(昭和35年法律第36号)で定めるところにより、当該物品について納付された関税に相当する金額を払い戻すものとする。

   (略)

   附 則

 (施行期日)

第1条 この法律は、平成10年4月1日から施行する。ただし、第18条の2を第18条の7とし、同条の次に1条を加える改正規定(第18条の2を第18条の7とする部分を除く。)及び第25条の2の次に1条を加える改正規定は、公布の日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 この例にならうと、上記の事例の附則は、次のようになるであろう。

 この条例は、公布の日から施行する。ただし、第5条を第6条とし、同条の次に1条を加える改正規定(第5条を第6条とする部分を除く。)、平成22年4月1日から施行する。

 かっこの部分は、「(同条の次に1条を加える部分に限る。)」としてもよいと思う。

*1:一部字句を補っている箇所がある。