2 目的規定の立案
(1) パターンへのあてはめ
目的規定には、当然、条例を制定する①直接的な目的を記載するのであるが、それのみを記載したものは少なく、その他に②目的達成の手段、③高次の目的を記載することがある。さらに、④条例を制定する動機を記載するものもある。
①から④までの全ての事項を記載する場合の基本的なパターンとして、大島稔彦『法令起案マニュアル』(P188)には、次のように記載しており、④→②→①→③の順番になるものとしている。
この法律は、……にかんがみ*1、……ことにより、……を図り、もって……することを目的とする。
上記のほか、石毛正純『法制執務詳解 新版Ⅱ』(P73)は、②の前に①を記載するパターンもあるとしている。その場合には、次のような構文になるのだろう。
この○○は、……に鑑み、……を図るため、……ことにより、もって……することを目的とする。
以下、高次の目的を記載する法令の事例について取り上げる。
ア 旧証券取引法の規定
旧証券取引法の目的規定は、次のように、高次の目的を書いた後に直接的な目的を書いている*2。
この法律は、国民経済の適切な運営及び投資者の保護に資するため、有価証券の発行及び売買その他の取引を公正ならしめ、且つ、有価証券の流通を円滑ならしめることを目的とする。
同様の事例として、前田正道『ワークブック法制執務(全訂)』(P71)に港湾法の例が記載されており、また山本庸幸『実務立法技術』(P72)には、目的規定のパターン例として「この法律は、……に資するため、……するとともに、(○○○)することを目的とする。」を挙げていることからすると、このような書き方が高次の目的をあわせて記載する場合の一般的な書き方だったのかもしれない。
しかし、証券取引法等の一部を改正する法律(平成18年法律第65号)により、証券取引法は題名が金融商品取引法に改められているが、その目的規定も次のように改められている。
この法律は、企業内容等の開示の制度を整備するとともに、金融商品取引業を行う者に関し必要な事項を定め、金融商品取引所の適切な運営を確保すること等により、有価証券の発行及び金融商品等の取引等を公正にし、有価証券の流通を円滑にするほか、資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な価格形成等を図り、もって国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資ことを目的とする。
したがって、現在は、高次の目的を書く場合には直接的な目的の後に書くものだと考えてよいだろう*3。