自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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一部改正例規を改正する例規の立案等~改正規定の特定を中心として(7)

4 一部改正例規において施行期日を書き分ける場合の改正規定の特定

 改正規定の特定は、一部改正例規について施行期日を書き分ける場合にも必要になってくる。

 (1) 施行期日を書き分けた場合における不都合なこと

 一部改正例規の一部について施行期日を書き分ける場合、一部の規定のみが施行されている状態のときはそれが元の例規に溶け込むものと考えられていることからすると、おかしな状態になっていることがある。

 例えば、次のような例がある。

   雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律(平成19年法律第79号)

 (雇用対策法の一部改正)

第1条 雇用対策法(昭和41年法律第132号)の一部を次のように改正する。

  目次を次のように改める。

  (略)

  第6章の章名中「措置」を「措置等」に改める。

  (略)

  第6章を第5章とし、同章の次に次の1章を加える。

    第6章 外国人の雇用管理の改善、再就職の促進等の措置

  (略)

   附 則

 (施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

 (1) 第1条中雇用対策法第12条を削り、第11条を第12条とし、第10条を第11条とする改正規定……、同法第6章の章名の改正規定……及び同法第6章を第5章とし、同章の次に1章を加える改正規定並びに次条、附則第6条及び第9条の規定 平成19年10月1日

  (2)  (略)

 この法律は、平成19年政令第244号により平成19年8月4日から施行されている。そうすると、目次の改正規定は、同日に施行されるのに対し、第6章の章名の改正規定及び同章を第5章とし、同章の次に1章を加える改正規定は、同法附則第1条第1号により同年10月1日から施行されるため、同年8月4日から9月30日までの間は、目次と本則とは整合がとれていないことになる。

 ただ、目次に関してだけであれば、目次は例規の検索の便宜のためのものに過ぎないとすれば、一定期間、目次と本則とで整合がとれていなくてもいいと割り切ることもありなのかもしれない。

 このように改正後の例規の中で整合がとれないもののほかに、次のように改め文自体に疑問を感じる例もある。

   地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律(平成14年法律第61号)

   (略)

 題名の次に次の目次及び章名を付する。

   (略)

 第16条中「第11条第5項」を「第24条第5項」に改め、同条を第32条とする。

 第15条を第31条とし、第14条を第30条とし、第13条を削り、第12条を第25条とし、同条の次に次の2条、1章、章名及び1条を加える。

   (略)

   附 則

 この法律は、気候変動に関する国際連合枠組条約京都議定書が日本国について効力を生ずる日から施行する。ただし、第16条を第32条とし、第15条を第31条とし、第14条を第30条とする改正規定、第12条の次に2条、1章、章名及び1条を加える改正規定(第26条、第27条及び第29条に係る部分に限る。)並びに第11条及び第10条の改正規定は、公布の日から施行する。

 気候変動に関する国際連合枠組条約京都議定書が日本国について効力を生ずる日は平成17年2月16日であるため、第16条の改正規定は同日に施行されることになっているが、同条はこの法律の公布日である平成14年6月7日に既に第32条になっている。この場合には、当然改正前の第16条を指していると考えるのであろうが、この改め文でよいのかという疑問は感じてしまう。この場合には、第16条の改正規定の施行期日も平成14年6月7日とし、その適用を平成17年2月16日とすれば解決するのだろうが、実際にはこのようにはやり難いのかもしれない。

 例規にも意外とルーズなところがあり、一部改正例規は、最終的にきちんとした姿になればよいと考えているのだろう。