自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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一部改正例規を改正する例規の立案等~改正規定の特定を中心として(8)

 (2) 施行期日の書き分けが複雑になる場合の改正規定の操作

  ア 事例1

   障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第81号)

  (略)

 第49条第1項第1号中「この節」の下に「及び第6節」を加え、同項第4号を次のように改める。

 (4)  (略)

 第49条第1項第4号の次に次の1号を加える。

 (4)の2  (略)

 第49条第1項第5号中「身体障害者若しくは」を「身体障害者(重度身体障害者その他の厚生労働省令で定める身体障害者に限る。以下この号において同じ。)若しくは」に改め、同項第8号の次に次の1号を加える。

 (8)の2  (略)

 第49条第1項第9号中「行うこと」の下に「(前号に掲げる業務を除く。)」を加える。

  (略)

   附 則

 (施行期日)

第1条 この法律は、平成18年4月1日から施行する。ただし、……第49条第1項の改正規定(同項第1号に係る部分、同項第8号の次に1号を加える部分及び同項第9号に係る部分を除く。)……は、平成17年10月1日から施行する。

 第49条第1項の改正規定の施行期日は、下線の部分が平成18年4月1日、それ以外の部分が平成17年10月1日ということになる。これは、追加する号を枝番号にしているため、あまり複雑ではない。

 しかし、枝番号にしないとどのようになるであろうか。まず、第49条第1項の改正規定は、次のようになる。

 第49条第1項第1号中「この節」の下に「及び第6節」を加え、同項第4号を次のように改める。

 (4)  (略)

 第49条第1項第9号中「行うこと」の下に「(前号に掲げる業務を除く。)」を加え、同号を同項第11号とし、同項第8号を同項第9号とし、同号の次に次の1号を加える。

 (10) (略)

 第49条第1項中第7号を第8号とし、第6号を第7号とし、同項第5号中「身体障害者若しくは」を「身体障害者(重度身体障害者その他の厚生労働省令で定める身体障害者に限る。以下この号において同じ。)若しくは」に改め、同号を同項第6号とし、同項第4号の次に次の1号を加える。

 (5)  (略)

 同様に施行期日が平成18年4月1日となる部分に下線を付している。ここでは、第5号を加える部分が平成17年10月1日の施行となるため、号を繰り下げる部分は、すべて同日の施行とすることになる。

 したがって、この場合の施行期日の規定は、次のとおりとなる。

 (施行期日)

第1条 この法律は、平成18年4月1日から施行する。ただし、……第49条第1項の改正規定(同項第1号に係る部分、同項第9号に係る部分(同号を同項第11号とする部分を除く。)及び同項第8号を同項第9号とし、同号の次に1号を加える部分(同項第8号を同項第9号とする部分を除く。)を除く。)……は、平成17年10月1日から施行する。

 このように追加する号に枝番号を用いないと、施行期日の書き分けがかなり複雑になってくる。また、第49条第1項第9号は、字句の改正より前に号を移動させる必要があることから、上記の書きぶりが適切なのか悩むところでもある。

 枝番号を用いる場合として、法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務』(P449)は、条等を繰り下げることが技術的にいたずらに複雑となる場合を挙げているが、これもそのような例と言えるかもしれない。