次の規定は、「ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成12年法律第81号)」の規定である。
(定義)
第2条 この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。
(1) つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その現に所在する場所若しくは通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。
(2) その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
(3) 面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。
(4) 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
(5) 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、文書を送付し、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。
(6) 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
(7) その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
(8) その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この号において同じ。)に係る記録媒体その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと。
2・3 (略)
4 この法律において「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等(第1項第1号から第4号まで及び第五号(電子メールの送信等に係る部分に限る。)に掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)又は位置情報無承諾取得等を反復してすることをいう。
ある条文を各号で書く場合、その各号を柱書きに当てはめてみて適切な文章になっているかどうか確認することが大切である。上記の規定は、下線部が柱書きの「当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し」という部分との相性がよくない。
さらに、第6号と第8号の初出以外の「その知り得る状態に置くこと」は、何を知り得る状態に置くことが「つきまとい行為等」に当たることとしているのかよく分からない*1。
以上を踏まえると、各号の書き振りをあまり変えないのであれば、次のような書き振りになるのではないだろうか*2。
(定義)
第2条 この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。
(1) 当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者(以下この項において「当該特定の者等」という。)に対しつきまとい、待ち伏せし、若しくはその進路に立ちふさがり、又はその住居、勤務先、学校その他その現に所在する場所若しくは通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、若しくは住居等の付近をみだりにうろつくこと。
(2) 当該特定の者に対しその行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くような行為をすること。
(3) 当該特定の者に対し、面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。
(4) 当該特定の者に対し、著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
(5) 当該特定の者に対し、電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、文書を送付し、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。
(6) 当該特定の者に対し、汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付すること。
(7) 当該特定の者に対しその名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くような行為をすること。
(8) 当該特定の者に対し、その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置くような行為をし、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この号において同じ。)に係る記録媒体その他の物を送付し、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信すること。
上記のようにすると、各号の冒頭の「当該特定の者に対し」という文言がしつこい印象となる。書き方は幾つか考えられるが、柱書きは修正しない書き方としては、例えば、第2号を「その行動を監視していると思わせるような事項を告げること(その知り得る状態に置くような行為をすることを含む。)。」とするように、「当該特定の者に対し」という文言と合わせて読む必要がない部分を括弧書きで書くようにすることが考えられる。
なお、本題とは関係がないが、法第2条第1項第5号に「連続して」という文言があるが、反復継続性は「ストーカー行為」の要件であるため、不要だったのではないか*3。
ちなみに、本法律は、議員提出法案(参法)により成立したものである。
*1:例えば第8号の「性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録の送信」については、他人に送信した場合であっても本人が知り得る状態に置かれることはあるかもしれないが、第6号などは想定される行為が思い浮かばない。
*2:下線部が修正箇所
*3:なお、「ストーカー行為等の規制等に関する法律等の解釈及び運用上の留意事項について」(平成25年10月2日付け警察庁丙生企発第115号警察庁生活安全局長通達)の記第2の1(3)オ(ウ)は、「『連続して』とは、『短時間や短期間に何度も』という意味であり、具体的には個々の事案により判断されることとなる」としているが、電話やファクシミリはともかく、文書の送付の場合は、該当する場合があるのだろうか。