自治体における契約代金の支払いは、契約書等により支払時期を明らかにされていない場合には、相手方が請求した日から15日以内とされているが(「政府契約の支払遅延防止等に関する法律(昭和24年法律第256号。以下「法」という。)」第14条において準用する法第10条)、この期間について殊更気にする職員も見かけるところである。法の関係規定は、次のとおりである。
(政府契約の必要的内容事項)
第4条 政府契約の当事者は、前条の趣旨に従い、その契約の締結に際しては、給付の内容、対価の額、給付の完了の時期その他必要な事項のほか、次に掲げる事項を書面(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この条において同じ。)(財務省令で定めるものに限る。)を含む。第10条において同じ。)により明らかにしなければならない。ただし、他の法令により契約書(その作成に代えて電磁的記録の作成がされている場合における当該電磁的記録を含む。)の作成を省略することができるものについては、この限りでない。
(1) 契約の目的たる給付の完了の確認又は検査の時期
(2) 対価の支払の時期
(3) 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
(4) 契約に関する紛争の解決方法
(定をしなかつた場合)
第10条 政府契約の当事者が第4条ただし書の規定により、同条第1号から第3号までに掲げる事項を書面により明らかにしないときは、同条第1号の時期は、相手方が給付を終了し国がその旨の通知を受けた日から10日以内の日、同条第2号の時期は、相手方が支払請求をした日から15日以内の日と定めたものとみなし、同条第3号中国が支払時期までに対価を支払わない場合の遅延利息の額は、第八条の計算の例に準じ同条第1項の財務大臣の決定する率をもつて計算した金額と定めたものとみなす。政府契約の当事者が第四条ただし書の場合を除き同条第1号から第3号までに掲げる事項を書面により明らかにしないときも同様とする。
(この法律の準用)
第14条 この法律(第12条及び前条第2項を除く。)の規定は、地方公共団体のなす契約に準用する。
この15日以内という期間を計算する際に請求した日を含むのか(初日算入)について、民法上の原則では初日不算入と考えるべきところ(民法第140条本文)、実務では初日算入とする取扱いが一般的のようである。これは、昭和25年4月17日付けで大蔵省理財局長が各省(庁)官房会計課長宛に発出した「政府契約の支払遅延防止等に関する法律の運用方針(理国第140号)」第5の一に、給付完了の確認又は検査の時期についてであるが、次のように期間計算は初日算入とすることとされているのではないかと思われる。
「通知を受けた日」とは、通知が国の支配圏内に到達した日であり、所定の執務時間内である限り1日として算入される。民法の規定によれば、期間の計算については、法令、裁判上の命令又は法律行為に別段の定めのある場合の外、その期間が午前零時より始まる場合を除いては、暦法的計算により初日を算入しないのであるが、この法律の規定においては、この条項(第5条)における場合と、他の条項における場合(第8条における「支払時期到来の日の翌日」又は第11条における「その期限の翌日」)とにおいて、その用法を区分しておるので、法令に別段の定のある場合として、通知を受けた日は、計算上1日に算入されるものである。
しかし、現在の立法技術を承知している者であれば、初日算入とする場合の「……から起算して」という文言がないので、普通に初日不算入と考えるだろう。
仮に、立法当時はそうした立法技術が一般的でなかったとしても、そもそも法の第8条や第11条に定める期間については、民法第140条ただし書の規定により初日算入と考えるべき場合であり、その翌日からとしたいために結果として表記を変えただけのことであって、法第10条の期間は、原則どおり初日不算入と解するのが普通の読み方のような気がする。
ただし、期限内に支払いができない場合であっても、その額が100円以上になる場合に遅延利息を支払わなければいけないだけのことであるから(法第8条)、1日にこだわってみてもそれほど意味があることとは思えないので、あえて実務における取扱いを変える必要もないのだろう。
もちろん、法第10条の規定は、疑義を生じないようにきちんと書き直すことが適当ではある。さらに、履行がなされた後の手続は、給付完了の確認又は検査→代金の請求→支払いという順序でなされることを想定しているが(法第6条第1項参照)、消耗品の購入の場合等は、相手方は納品の際に請求書を持参することも普通にあるだろう。そうしたことも含め、本法は、規定を整備することが必要な法律であるとは言える。