自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

例規審査事務経験のある地方公務員のブログ。https://twitter.com/hotiak1

一部改正例規を改正する例規の立案等~改正規定の特定を中心として(2)

2 一部改正例規の一部を改正する例規の立案の方法

 (1) 改正規定の一部を改める場合

 次の条例(先行条例)が公布されたものとする。

   A条例の一部を改正する条例

 A条例の一部を次のように改正する。

第2条に次の1項を加える。

2 ‥‥‥‥

   附 則

 この条例は、令和3年4月1日から施行する。

 その公布後に、さらにA条例第2条に1項の追加をする改正を行う必要が生じ、その施行期日は令和3年1月1日とする条例(後行条例)を制定する場合には、後行条例は次のようになり、その附則で先行条例の改正を行うことになる。

   A条例の一部を改正する条例

 A条例の一部を次のように改正する。

第2条に次の1項を加える。

2 ‥‥‥‥

   附 則

 (施行期日)

1 この条例は、令和3年1月1日から施行する。

 (A条例の一部を改正する条例の一部改正)

2 A条例の一部を改正する条例(令和3年〇〇条例第〇号)の一部を次のように改正する。

  ………

 先行条例をどのように改正するかであるが、先行条例で追加した第2項が、後行条例が制定されたことによって第3項とする場合(パターン1)と第2項のままとする場合(この場合は、後行条例で追加する規定が先行条例の施行によって第3項とする必要があることになる)(パターン2)とが考えられる。

 そうすると、先行条例の改正規定は、パターン1の場合とパターン2の場合とで次のようになるように改正する必要がある。

改正前 パターン1改正後 パターン2改正後
第2条に次の1項を加える。
2 (略)
第2条第2項を同条第3項とし、同条第1項の次に次の1項を加える。
2 (略)
第2条に次の1項を加える。
 (略)

 したがって、先行条例を改正する改め文は、次のようになる。

パターン1の場合 パターン2の場合
第2条に1項を加える改正規定中「第2条」を「第2条第2項を同条第3項とし、同条第1項の次」に改める。 第2条に1項を加える改正規定中同条第2項を同条第3項とする。

 つまり、基本的には通常の一部改正と同じ要領で行っていくことになる。

 パターン1の場合は、通常の一部改正の際に改めたい文言を捉えて改正していくのと同じやり方である。

 パターン2の場合は、通常の一部改正の場合に第2項を第3項にするときと同じ考え方である。一部改正例規の一部改正として考えた場合に、第2項を第3項にするという考え方が成り立つのかどうかは多少疑問がないではないが、合理性を考えれば認めていいのであろう。

 なお、後行条例の施行期日が先行条例の施行期日と同日でよいのであれば、次のように後行条例の本則で加えている1項を先行条例を改正することによって追加することも考えられる。 

区分 先行条例の改正後の改め文 先行条例を改正する改め文
先行条例で追加した第2項を第3項とする場合 第2条に次の2項を加える。
 ………
 ………
第2条に1項を加える改正規定中「1項」を「2項」に改め、同条第2項を同条第3項とし、同項の前に次の1項を加える。
2 ………
先行条例で追加した第2項を第2項のままとする場合 第2条に次の2項を加える。
2 ………
 ………
第2条に1項を加える改正規定中「1項」を「2項」に改め、同条第2項の次に次の1項を加える。
3 ………

 (2) (1)以外の場合

 改正規定の一部を改める場合以外の場合は、比較的シンプルである。

 改正規定の全部を改める場合は、「第○条の改正規定を次のように改める。」として改正後の改正規定を書くことになる。

 改正規定を削る場合は、「第○条の改正規定を削る。」とすることになる。

 改正規定を追加したい場合には、その直前の改正規定を捉えて、「第○条の改正規定の次に次のように加える。」として、追加したい改正規定を書くことになる。