自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

例規審査事務経験のある地方公務員のブログ。https://twitter.com/hotiak1

条例制定権の範囲と限界~国及び他の自治体の事務との関係(2)

 (2) 「私法秩序の形成等に関する事項」と条例制定権

  ア 概説

 前回取り上げた条例制定権が及ばないとされた成田教授の類型化のうち、「①国全体にわたって画一的な制度によることが好ましいと思われるもの」と「④その他、対象たる事項が一地方の利害にとどまらず全国民の利害に関係のあるもの又は規制の影響の及ぶ範囲が一地方を超えて全国にわたるもの」については、法律で規定されていればそれに反することはできず、法律で規定されていない事項であれば、徳島市公安条例事件判決(最大判昭和50年9月10日)の判旨により判断することになるのだろうが、基本的には立法事実があれば条例制定が可能と考えてよいだろう。

 「③刑事犯の創設等に関する事項」については、一応条例制定はできないと考えるべきであろうが、行政犯との区別は相対的であり、実際には法律に規定されていない事項であれば行政犯として条例で規定することはあり得るし、それが違法と解すべきではないだろう*1

 最も判断に迷うのが「②私法秩序の形成等に関する事項」ではないだろうか。これについては、それを条例で規定すると民法等の規定に反することになるため条例事項ではないということになるだろうが、条例を定めることができない限界がどこまでなのかはっきりしないところがある。

 そこで、次回以降で具体的な事例を取り上げて検討することにする。

*1:したがって、条例を規定する場合には、刑法など自然犯的なもののように義務規定を置くことなく処罰規定を置くのではなく、必ず義務規定を置き、その違反行為に対して刑罰を科す旨の処罰規定を置くことになる。