自治体が住民に対し義務を課し、又は権利を制限するためには、条例によらなければならない(地方自治法第14条第2項)。したがって、現在は、権利義務規制を伴わない条例が増えているが、条例を制定する意義は、何と言っても権利義務規制を行うところにあることは否定できない。
そして、権利義務規制を行う条例を制定する意義は、同様の目的を有する法律と同様に考えることができる。そうした法律を制定する意義は、住民の身体、生命それから財産を保護するためであるのだが、住民が他者により受けた侵害に対しては、当事者間で民事法により事後的に解決されるのが原則であるところ、次のような場合に法律が制定されると言われている。
- 当事者の事後処理に委ねた場合に社会的コストがかかりすぎる場合
- 権利性まで有さない利益を保護する必要がある場合
1は、一度発生した問題を教訓として制定されることが通常であり、耐震偽装の問題などは記憶に新しいところである。
2の例としては、景観利益の保護などが挙げられる*1。
法律で定めると、住民が特定の事象が発生した場合にその定めた事項について裁判所で主張することを認める枠を設ける機能があると考えることができるが*2、そうした機能を通じて当該特定の事象が発生することを予防することを目的とするのである。
そして、上記の目的が全国的に共通する場合に法律が制定され、地域特有な場合に制定されるのが条例である。ただし、法律による規制は後追い的になってしまうものであるため、一般的に保護すべき利益が認められるのであれば、条例を言わば実験的に定めることも許容されるだろう。
ただし、条例を制定する以上、その目的は、私益の保護ではなく、公益の保護でなければならないことになる*3。
そうした意味で、明石市が制定を検討している養育費の不払いに対処するための条例が目的としている公益は、児童扶養手当等の社会的給付を減少させることといったような報道もあるところだが、はたして条例で定めるべきものなのか、疑問を感じないでもない。