自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

例規審査事務経験のある地方公務員のブログ。https://twitter.com/hotiak1

執行機関(5)

4 本庁組織における条例事項

 (1) 首長部局

  ア 内部組織における条例事項

 自治体の内部組織については、地方自治法第158条第1項後段で長の直近下位の内部組織の設置及びその分掌事務が条例事項とされている。   

 地方自治法第158条の規定は平成15年法律第81号の改正によりほぼ現行と同様の規定となっているが、当該改正前の同条の規定は次のとおりである。

第158条 都道府県知事の権限に属する事務を分掌させるため、条例で、都に11局、道及び人口400万以上の府県に9部、人口250万以上400万未満の府県に8部、人口100万以上250万未満の府県に7部、人口百万未満の府県に6部を置くものとする。

② 都道府県知事は、必要があると認めるときは、前項の規定にかかわらず、条例で、局  部の数を増減することができる。この場合においては、第2条第14項及び第15項の 規定の趣旨に適合し、かつ、国の行政組織及び他の都道府県の局部の組織との間に権衡を失しないように定めなければならない。

③ 都道府県知事は、前項の規定により第1項の規定による局部の数を超えて局部(室その他これに準ずる組織を含む。以下本条において同じ。)を置こうとするときは、 あらかじめ総務大臣に届け出なければならない。

④ 都道府県知事は、局部の名称若しくはその分掌する事務を定め、若しくは変更し、  又は局部の数を増減したとき(前項の規定による届出を行つた場合を除く。)は、遅滞なくその旨を総務大臣に届け出なければならない。

⑤ 都道府県は、公共事業の経営に関する事務を処理させるため、条例で、必要な組織を設けることができる。

⑥ 都道府県知事は、その権限に属する事務を分掌させるため、局部の下に必要な分課を設けることができる。

⑦ 市町村長は、その権限に属する事務を分掌させるため、条例で必要な部課を設けることができる。この場合においては、第2条第14項及び第15項の規定の趣旨に適合し、かつ、他の市町村の部課の組織との間に権衡を失しないように定めなければならない。

 首長の内部組織にのみ着目すると、市町村は部課について条例で定めることとされているのに対し、都道府県は局部の数が法定され、その数を増減するときに条例を定める必要があることとされている。これは、平成3年法律第79号の改正前は、地方自治法都道府県の局部の名称及びその分掌する事務が例示されていたため、そのような規定になったのではないかと思うが、実際には条例準則に基づき局部の設置条例を制定するのが通例であったと思う。

 では、自治体の内部組織を条例で定めることとしている理由は、かつて国が官房・局・部の設置及び所掌事務について法律で定めることとしていたことによるのではないかと考えるが、そうすると、自治体の内部組織についても、条例事項にする理論的な意義はないことになる。

ミスが顕在化しなかった事例

   租税特別措置法施行令等の一部を改正する政令等の一部を改正する政令(令和3年政令第298号)

 (法人税法施行令等の一部を改正する政令の一部改正)

第3条 法人税法施行令等の一部を改正する政令(令和2年政令第207号)の一部を次のように改正する。

  第3条のうち、租税特別措置法施行令(昭和32年政令第43号)第27条の4第1項を同条第3項とし、同項の次に1項を加える改正規定のうち、同条第5項第1号ロ中「、第2項及び第4項」を「及び第6項」に改め、同項第2号イ⑴中「同項」の下に「(法第42条の3の2第3項第2号の規定により読み替えられた同条第2項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」を加え、同改正規定中同項を同条第4項とする

(略)

 この改め文を見ていて、「第27条の4第1項を同条第3項とし、同項の次に1項を加える改正規定のうち」としていながら、改正しているのは第5項なので、おかしいなあと思って見ると、第5項を第4項に改正している。

 令和2年政令第207号の該当部分の改正規定は、次のようになっている。 

 第27条の4第5項中……に改め、同項を同条第9項とし、同条第4項中……を削り、同項を同条第8項とし、同条第3項中……に改め、同項を同条第7項とし、同条第2項中……に改め、同項を同条第6項とし、同条第1項中……に改め、同項を同条第4項とし、同項の次に次の1項を加える。

5 (略)

 つまり、令和2年政令第207号は、第27条の4の項を次のように移動するものである。

  • 1項→4項
  •  (5項追加)
  • 2項→6項
  • 3項→7項
  • 4項→8項
  • 5項→9項

 令和2年政令第207号の施行期日は令和4年4月1日であるが、当該政令の公布後に令和3年4月1日施行の「租税特別措置法施行令等の一部を改正する政令(令和3年政令第119号)」が制定され、次のような改正を行っている。

 第27条の4第10項中……に改め、……同条第6項中……に改め、同項を同条第7項とし、同条第5項を同条第6項とし、同条第4項中……に改め、同項を同条第5項とし、同条第3項を削り、同条第2項中……に改め、同項を同条第3項とし、同項の次に次の1項を加える。

4 (略)

 第27条の4第1項の次に次の1項を加える。

2 (略)

 つまり、第27条の4の第5項までの規定を次のように移動している。

  •  (1項移動なし)
  •  (2項追加)
  •  2項→3項
  •  (3項削る)
  •  4項→5項
  •  5項→6項

 そのため、令和2年政令第207号を改正する必要が生じ、「法人税法施行令等の一部を改正する政令の一部を改正する政令(令和3年政令第130号)」で次のように改めている。

 第3条のうち、租税特別措置法施行令第27条の4第15項第4号の改正規定中……同条第5項の改正規定中「第27条の4第5項」を「第27条の4第6項」に改め、同条第4項の改正規定中「同条第4項中」を「同条第5項中「第2項第2号」を「第5項第2号」に改め、」に改め、同条第3項の改正規定中「同条第3項中「第42条の4第8項第1号」を「第42条の4第19項第1号」を「同条第4項中「第42条の4第8項第1号イ⑵」を「第42条の4第19項第1号イ⑵」に改め、同条第2項の改正規定中「同条第2項中「第42条の4第8項第1号」を「第42条の4第19項第1号」を「同条第3項中「第42条の4第8項第1号イ⑵」を「第42条の4第19項第1号イ⑵」に改め、同条第1項の改正規定中「同条第1項中「第18項第1号」を「第23項第1号」を「同条第2項中「第42条の4第8項第1号イ⑴」を「第42条の4第19項第1号イ⑴」に改め、同項を同条第5項とし、同条第1項中「第27項第1号」を「第32項第1号」に、「第18項第3号」を「第23項第3号」を「第27項第3号」を「第32項第3号」に改め、同項を同条第4項とし、同項の次に1項を加える改正規定中「同条第4項」を「同条第3項」に改め、同条第5項後段を次のように改める。

(略)

 以上により、租税特別措置法施行令第27条の4の項の変遷をまとめると、次のとおりとなる。

改正前(括弧内は当初の令和2年政令第207号による改正後) 令和3年政令第119号による改正後 令和3年政令第130号による改正令和2年政令第207号による改正後 備考
1項(4項) 1項 3項  
(5項)   (改正漏れ)  
  (追加)2項 5項 旧1項の改正規定を改正して移動
2項(6項) 3項 6項  
3項(7項) (削除)    
  (追加)4項 7項 旧3項の改正規定を利用
4項(8項) 5項 8項  
5項(9項) 6項 9項  

 したがって、令和3年政令第130号の改め文のうち、「同項を同条第4項とし、同項の次に1項を加える改正規定中「同条第4項」を「同条第3項」に改め、同条第5項後段を次のように改める。」の部分は、「……に改め、同条第5項後段を次のように改め、同項を同条第4項とする。」というようにしなければいけなかったのだろう。

 結果としては、令和2年政令第207号の施行期日である令和4年4月1日までに改正できてよかったということになるのだけれど、まあ複雑である。

「……を含む」(下)

(本記事は、2.11付け記事に引き続き掲載する予定にしていたものですが、失念していたので、ここに掲載するものです。)

 

 次の規定は、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行令(以下「政令」という。)」第21条の規定である。

 (権限の委任)

第21条 (略)

2・3 (略)

4 法第55条第1項から第3項まで及び第6項並びに第56条第1項から第3項までの規定による国土交通大臣の権限は、認定プラスチック使用製品製造事業者等、指定調査機関、特定プラスチック使用製品多量提供事業者又は多量排出事業者の事務所、工場、事業場又は倉庫の所在地を管轄する地方整備局長、北海道開発局長、地方運輸局長(国土交通省設置法(平成11年法律第100号)第4条第1項第15号、第18号、第86号、第87号、第92号、第93号及び第128号に掲げる事務並びに同項第86号に掲げる事務に係る同項第19号及び第22号に掲げる事務に係る権限については、運輸監理部長を含む。)又は地方航空局長に委任するものとする。ただし、国土交通大臣が自らその権限を行うことを妨げない。

5・6 (略)

 国土交通省に置かれる運輸監理部は、地方運輸局の所掌事務の一部を分掌させるために置かれている組織であり(国土交通省設置法第36条第1項)、現在は兵庫県を管轄区域とする神戸運輸監理部が唯一置かれている(国土交通省組織令第215条)。そして、運輸監理部の所掌事務は、運輸地方運輸局組織規則第85条第1項に定められている。

 普通は、A組織が分掌する事務をB組織が所掌することとした場合、当該事務についてはAには権限がないことになる。そうすると、「……を含む」とすると、地方運輸局と運輸監理部の両者が権限を行使できるように読めるので*1、上記の括弧書きの部分は、「(当該所在地が運輸監理部の管轄する区域内にあっては、国土交通省設置法……に係る権限については、運輸監理部長)」というようにすべきだと思う。

 ちなみに、政令第21条第6項の規定は、次のとおりであり、福岡財務支局長への権限委任について、そうした書き方をしている。

 法第58条第3項の規定により金融庁長官に委任された権限のうち、法第55条第6項の規定及び法第56条第3項の規定(多量排出事業者に係る部分に限る。)による権限は、多量排出事業者の事務所、工場、事業場又は倉庫の所在地を管轄する財務局長(当該所在地が福岡財務支局の管轄する区域内にある場合にあっては、福岡財務支局長)に委任するものとする。ただし、金融庁長官が自らその権限を行うことを妨げない。

 財務支局は、運輸監理部と同様、福岡財務支局の一つしかなく*2、他の例規においても同様の書き振りとなっている。両者で異なっているのは、神戸運輸監理部の所掌事務は、地方運輸局の所掌事務の一部であるのに対し、福岡財務支局の所掌事務は、金融庁の所掌事務以外の事務については、その管轄区域においては財務局の所掌事務の全てである*3。しかし、その程度の違いで書き振りを異にする理由は、よく分からない。

*1:そのように読まない方法としては、組織関係例規地方運輸局と運輸監理部との間で事務の振り分けがなされているので、それと合わせて読めばどちらか一方の所掌事務になるということなのではないだろうか。

*2:財務省組織令第82条参照

*3:財務省組織規則第182条参照

執行機関(4)

3 組織例規の原則~組織法定主義

 自治体の個々の組織について触れる前に、組織法定主義の考え方について触れておくこととする。

 組織に関する事項は、権利義務に関する事項であり、法律事項であるとされている*1。しかし、その全てについて法律で規定することは非現実的であるが、では内部組織については、どの程度まで法律で定めなければいけないのであろうか。この点について、国の組織についてであるが、佐藤功『行政組織法(新版・増補)』(P92)が参考になるので、引用しておく。

問題は、従来の官制の内容がすべて法律で定められることを要するかにある。そしてこの問題は、すでに憲法の審議に当たって貴族院において詳細に論議された点であった。すなわち沢田牛麿議員の「今度は官制というものが全部法律事項になるのでありますか」という形の質問に対して、金森国務大臣は、憲法の解釈として、省の設置(したがってその所掌事務をも含む)は、1つには憲法自体が法律によって定めるものとしている内閣の組織と密接不可分であること(このことは……、66条1項を74条の「主任の国務大臣」の規定と関連させて解する考え方を示す)、第2には、いかなる行政事務がいかなる省の所掌であるかは「国民との間の意思作用を起すもの」であり、また「国民の権利義務と直接に関連するもの」であることの結果として法律で定めるべきであるが、省の内部組織(職員、その定員をも含む)は法律を要しないが、ただ……国会の尊重という見地から、憲法上は法律を要せず命令で定めうる事項についても法律で定めることとするのが妥当である、ただその場合も行政の機動性の確保という面から法律の委任という方法によって両者の要請を調和しうるであろう、という趣旨を述べたのであった。

 国は、現在は官房・局・部の設置及び所掌事務については政令で定めることとしている*2。しかし、昭和58年法律第77号による国家行政組織法改正前は法律事項とされていたが、これは、その事項を政令事項としていた原案を参議院において修正されたことによるものである。

 国の組織について、憲法上どこまで法律で定めるべきかについては、国民の権利義務と直接に関連する省の設置のみで足り、省の内部組織(職員、その定員をも含む)は法律を要せず、仮に法律で定めていたとしても、それは政策判断によるということになる。

*1:山本庸幸『実務立法演習』(P14)では、「法律に基づく行政の原理の下では、これらの行政組織の権限には法律上の根拠が必要で、その意味では、権利義務にかかわる事項そのものであるからである」と記載されている。

*2:国家行政組織法第7条第4項

執行機関(3)

 (2) 自治体の執行機関

 自治体の執行機関という概念は、議決機関である議会に対して、行政事務を管理執行する機関を表すために地方自治法で設けられた概念である*1

 自治体の執行機関については、地方自治法第180条の5に定めがあるが、地方自治法における行政機関概念は、作用法的行政機関概念が中心となっている*2

 しかし、自治体組織法制においては、事務配分的行政機関概念も用いている。例えば「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」第23条の規定は、次のとおりである。

 (教育委員会の職務権限)

第23条 教育委員会は、当該地方公共団体が処理する教育に関する事務で、次に掲げるものを管理し、及び執行する。

 (1) 教育委員会の所管に属する第30条に規定する学校その他の教育機関(以下「学校その他の教育機関」という。)の設置、管理及び廃止に関すること。

 (2) 学校その他の教育機関の用に供する財産(以下「教育財産」という。)の管理に関すること。

 (3) 教育委員会及び学校その他の教育機関の職員の任免その他の人事に関すること。

 (4) 学齢生徒及び学齢児童の就学並びに生徒、児童及び幼児の入学、転学及び退学に関すること。

 (5) 学校の組織編制、教育課程、学習指導、生徒指導及び職業指導に関すること。

 (6) 教科書その他の教材の取扱いに関すること。

 (7) 校舎その他の施設及び教具その他の設備の整備に関すること。

 (8) 校長、教員その他の教育関係職員の研修に関すること。

 (9) 校長、教員その他の教育関係職員並びに生徒、児童及び幼児の保健、安全、厚生及び福利に関すること。

 (10)学校その他の教育機関の環境衛生に関すること。

 (11)学校給食に関すること。

 (12)青少年教育、女性教育及び公民館の事業その他社会教育に関すること。

 (13)スポーツに関すること。

 (14)文化財の保護に関すること。

 (15)ユネスコ活動に関すること。

 (16)教育に関する法人に関すること。

 (17)教育に係る調査及び指定統計その他の統計に関すること。

 (18)所掌事務に係る広報及び所掌事務に係る教育行政に関する相談に関すること。

 (19)前各号に掲げるもののほか、当該地方公共団体の区域内における教育に関する事務に関すること。

 上記の規定の見出しは「教育委員会の職務権限」となっているが、これが教育委員会が行う事務を定めた規定であることは明らかだろう。

 このように、行政委員会は、法令において行政(官)庁であると同時に、事務配分的行政機関概念における行政機関として規定されることもあるため、分りにくくしている面があるのではないかと思う。行政委員会に関する法令の規定は、それが行政庁として用いられているのか、事務配分の単位として用いられているのかを意識することが大切になってくるのだろう。

*1:宇賀克也『行政法概説Ⅲ』(P32)参照

*2:宇賀前掲書(P32)参照

執行機関(2)

2 執行機関の概念

 (1) 作用法的行政機関概念と事務配分的行政機関概念

 自治体の行政委員会の概念は理解が難しいということをよく聞く。これは行政機関の概念が作用法的行政機関概念と事務配分的行政機関概念とが混在していることによるものと思われる。行政が行使する権限に着目した概念が作用法的行政概念であり、行政が行う事務の配分の単位という点に着目した概念が事務配分的行政機関概念である*1

 作用法的行政機関概念は、戦前の行政官庁理論に基づくものである。行政(官)庁とは、行政主体のために、しかし自己の名をもって意思決定を行い、それを対外的に表示する権限を持った行政機関である*2。したがって、国の機関であれば大臣がこれに当たる。そして、行政(官)庁を補助する組織として、補助機関や執行機関*3が存在する。

 これに対し、事務配分的行政機関概念は、行政組織内部における事務配分の単位を示す概念であり*4、戦後、GHQの意向により国家行政組織法においてこの概念が採用され、内閣府設置法においても用いられている*5

 上記のとおり、作用法的行政機関概念と事務配分的行政機関概念は、権限に着目するか、事務配分に着目するかという違いがある。ところで、「事務の配分」が無ければ「権限」はありえないが、一定の「事務の配分」がなされたからといって、当然に一定の内容の権限も生ずるということにはならない*6。したがって、当該組織が所管する事務を示すという意味では、事務配分的行政機関概念の方が適当ということになる。

*1:藤田宙靖『行政組織法』(P34~)参照。なお藤田前掲書では、事務配分的行政機関概念を組織法的行政機関概念と呼んでいる。

*2:藤田前掲書(P39)参照

*3:私人に対して直接に実力を行使する権限を有する機関(警察官など)をいい、地方自治法上の執行機関とは異なる。

*4:藤田前掲書(P35)参照

*5:宇賀克也『行政法概説Ⅲ』(P33)参照

*6:藤田前掲書(P38)参照

執行機関(1)

 私が職員になった当時は、組織改定は小規模なものを除きほとんど行われていなかったが、法規担当となった時期は、首長が変わったこともあり、頻繁に行われるようになった。そのため、組織に関する法制度については特に留意する必要があったことから、関心がある分野であり、旧ブログにおいても取り上げたことがあった。

 その後、再び法規部署に戻った際に、組織改定に係る条例改正を経験したが、そのときに感じたことを併せて執行機関という組織について14回にわたってまとめてみることにする。

自治体法制執務雑感」関連記事

  • 2007年4月21日付け記事「自治体の組織(1)〜はじめに」
  • 2007年4月29日付け記事「自治体の組織(2)〜執行機関(その1)」
  • 2007年4月30日付け記事「自治体の組織(3)〜執行機関(その2)」
  • 2007年5月4日付け記事「自治体の組織(4)〜各執行機関(特に長)の組織・①出先機関(その1)」
  • 2007年5月5日付け記事「自治体の組織(5)〜各執行機関(特に長)の組織・①出先機関(その2)」
  • 2007年5月11日付け記事「自治体の組織(6)〜各執行機関(特に長)の組織・②内部組織」
  • 2007年5月12日付け記事「自治体の組織(7)〜委任と専決」

1 執行機関に関する法律の規定

 自治体の組織は、法律に規定されているもののみ設置できることとされている(憲法第92条)*1。したがって、自治体の組織について規定する法律の代表的なものは地方自治法であるが、地方自治法やその他の法律に定めのない種類の組織を自治体が設けることはできない。

 そして、附属機関のように、法律が定めた種類の機関について、自治体が独自に定めることができるものもあるが*2、執行機関は、法定の機関以外の機関を自治体が独自に定めることはできない*3。ただし、執行機関の内部組織について、条例に委任して自治体が定めることとしているものがある。ちなみに、地方自治法が執行機関(その出先機関を含む。)について条例に委任している事項を次に掲げておく。

  • 支庁・地方事務所等の設置(自治法第155条)
  • 行政機関の設置(自治法第156条第1項~第3項)
  • 内部組織の編成(自治法第158条)
  • 副知事及び副市町村長の定数(設置しない場合も含む。)(自治法第161条)
  • 職員の定数(自治法第172条第3項・第191条第2項)
  • 監査委員の事務局及びその職員定数(自治法第200条)
  • 監査委員に関する事項(自治法第202条)
  • 労政事務所の設置(自治法附則第4条第2項)

*1:憲法第92条は、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」と規定する。

*2:地方自治法第202条の3第1項は、「普通地方公共団体の執行機関の附属機関は、法律若しくはこれに基く政令又は条例の定めるところにより、その担任する事項について調停、審査、審議又は調査等を行う機関とする。」と規定している。

*3:地方自治法第138条の4第1項は、「普通地方公共団体にその執行機関として普通地方公共団体の長の外、法律の定めるところにより、委員会又は委員を置く。」と規定している。