自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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経過規定(9)

  (4) 指定区域に関する経過規定

 区域指定を行い、その区域内で一定の規制を行うこととする条例を制定していたが、その条例を全面的に改めた際に、旧条例に基づく指定等については、新条例に基づいて当該区域を指定するまでは旧条例はなお効力を有することとしたのだが、その指定がなされると、旧条例に基づく指定は解除する必要がある。その場合に、当該指定を解除されたこととみなす規定を、次の鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律第15条第12項の規定を参考に書いたことがある。

 (指定猟法禁止区域)

第15条 環境大臣又は都道府県知事は、特に必要があると認めるときは、次に掲げる区域について、それぞれ鳥獣の保護に重大な支障を及ぼすおそれがあると認める猟法(以下「指定猟法」という。)を定め、指定猟法により鳥獣の捕獲等をすることを禁止する区域を指定猟法禁止区域として指定することができる。

(1) 環境大臣にあっては、全国的な鳥獣の保護の見地からその鳥獣の保護のため必要な区域

(2) 都道府県知事にあっては、地域の鳥獣の保護の見地からその鳥獣の保護のため必要な当該都道府県内の区域であって前号の区域以外の区域

2 環境大臣又は都道府県知事は、前項の規定による指定をするときは、その旨並びにその名称、区域及び存続期間を公示しなければならない。

3 第1項の規定による指定は、前項の規定による公示によってその効力を生ずる。

4~11 (略)

12 第1項の規定により都道府県知事が指定する指定猟法禁止区域の全部又は一部について同項の規定により環境大臣が指定する指定猟法禁止区域が指定されたときは、当該都道府県知事が指定する当該指定猟法禁止区域は、第2項及び第3項の規定にかかわらず、それぞれ、その指定が解除され、又は環境大臣が指定する当該指定猟法禁止区域と重複する区域以外の区域に変更されたものとみなす。

13   (略)

 もちろん、旧条例に基づく指定が不要になったときに、解除の手続をとってもいいのだが、例規に書けば済むのであれば、事務の省力化につながるのではないだろうか。

経過規定(8)

  ウ その他

 附属機関の経過規定に関連した事項について、実際に聞かれて疑問に思ったことがある。それは、附属機関の会議の招集について「会議は、会長が招集する」といった規定を置くことがあるが、会長は委員の互選によることとしている場合には、最初の会議は招集者がいないことになり、その場合には、附属機関の会長が招集することはできないので、長が招集すればいいのかということである。

 法律では次のような例がある。 

   ユネスコ活動に関する法律(昭和27年法律第207号)

 (会議)

第15条 国内委員会の会議は、年2回会長が招集する。但し、会長は、必要があると認めるときは、臨時にこれを召集することができる。

   附 則

 (第1回の会議の招集)

6 国内委員会の第1回の会議は、第15条の規定にかかわらず、文部大臣が招集する。

  例えば、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成13年法律第112号)」第11条第1項などに会議の招集の規定があるが、上記のような経過規定は置かれていない。会長が決まっていない場合は、その審議会を所管する機関の長が招集するのが当然だと考えているのかもしれない*1

 さらに、近年は、会議の招集に関する規定自体置かれていない例が多いように思う。確かに、会議の成立要件とか議決の方法などは大切であろうが、誰が招集するかは、審議会に関してはどちらでもいい問題なのかもしれない。

 (3) 特別会計の廃止に伴う経過規定

 特別会計を、例えば平成18年度限りで廃止する場合には、廃止条例の施行日は平成19年4月1日とするが、出納整理期間があること等により、所要の経過規定を置く必要がある。

 法律の例として、国立学校特別会計法が国立学校法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成15年法律第117号)により廃止され、平成16年4月1日から施行されたが、同法に次の経過規定が置かれている。

   附 則

 (国立学校特別会計法の廃止に伴う経過措置)

第2条 国立学校特別会計における平成15年度の収入及び支出並びに同年度以前の年度の決算に関する事務については、なお従前の例による。

2 (略)*2

3 この法律の施行の際現に国立学校特別会計に所属する権利及び義務……は、政令で定めるところにより、一般会計に帰属するものとする。

  上記の第3項のような規定が一般的に必要なのかどうかは、検討してみたい。

*1:古い事例だが、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」附則第9条に「前条の規定により新委員が任命された後最初に招集すべき教育委員会の会議は、新法第13条第1項の規定にかかわらず、地方公共団体の長が招集する。」という規定が置かれているが、このような場合は、附属機関と違って当然長が招集するとも言い難いので、経過規定を置いたのではないかと思う。

*2:附則第2条第2項は、同条第1項に規定する事務を行う主体を定めている。

経過規定(7)

  イ 附属機関の性格に変更がある場合

 次の法令の規定は、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律の制定の際に、同法に基づく事項を審査する審査会について、従来の情報公開審査会を改組して情報公開・個人情報保護審査会とした場合における経過規定である。

行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成15年法律第61号)

   附 則

(情報公開審査会の廃止及び情報公開・個人情報保護審査会の設置に伴う経過措置)

第2条 この法律の施行の際現に第8条の規定による改正前の行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下この条において「旧行政機関情報公開法」という。)第23条第1項又は第2項の規定により任命された情報公開審査会の委員である者は、それぞれ、この法律の施行の日に、情報公開・個人情報保護審査会設置法(平成15年法律第60号)第4条第1項又は第2項の規定により情報公開・個人情報保護審査会の委員として任命されたものとみなす。この場合において、その任命されたものとみなされる者の任期は、同条第4項の規定にかかわらず、同日における旧行政機関情報公開法第23条第1項又は第2項の規定により任命された情報公開審査会の委員としての任期の残任期間と同一の期間とする。

2 この法律の施行の際現に旧行政機関情報公開法第24条第1項の規定により定められた情報公開審査会の会長である者又は同条第3項の規定により指名された委員である者は、それぞれ、この法律の施行の日に、情報公開・個人情報保護審査会設置法第5条第1項の規定により会長として定められ、又は同条第3項の規定により会長の職務を代理する委員として指名されたものとみなす。

3 この法律の施行前に情報公開審査会にされた諮問でこの法律の施行の際当該諮問に対する答申がされていないものは情報公開・個人情報保護審査会にされた諮問とみなし、当該諮問について情報公開審査会がした調査審議の手続は情報公開・個人情報保護審査会がした調査審議の手続とみなす。

守秘義務等に関する経過措置)

第3条 情報公開審査会の委員であった者に係るその職務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない義務については、第8条の規定の施行後も、なお従前の例による。

2 第8条の規定の施行前にした行為及び前項の規定によりなお従前の例によることとされる場合における同項の規定の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

  留意すべきなのは、現在の審議会の委員(附則第2条第1項)及び役員の扱い(同条第2項)、既に諮問されている事項の扱い(同条第3項)、それから委員を対象とした罰則規定を設けている場合には、罰則に係る経過規定を置くことを考えるべきということになる。

経過規定(6)

3 具体的な経過規定の例

  (1) 施行日前に一定の行為をすることができる旨の経過規定

 ある行為等について許可制を採ることとした場合、当該行為等を施行日にしたい者もいるため、法律では次のような経過規定を置くことがある。

 第○条の許可の手続は、この法律の施行前においても行うことができる。

 しかし、事前届出制を採ることとした場合に同様の経過規定を置いている例は見たことがない。届出制であっても当該行為等を施行日にしたい場合もあると思うが、上記のような経過規定が置かれないのは、届出であれば行政庁に到達すれば足りるため、あえて規定するまでもないと考えているのかもしれないし、施行日前後であればあえて事前に届出をさせなくてもいいと考えているのかもしれない*1

 ただし、届出制の場合であっても、一定期間着手制限をかけ、必要に応じ行政命令等の規定を置くような場合には、当該届出に係る行為の着手時期との関係で、行為者が施行日前に届出を行いたいという場合もあるだろうから、経過規定を置くべき場合もあると思う。

 その場合の経過規定としては、上記と同様に「第○条の届出は、この条例の施行前においても行うことができる。」といった規定が基本となるが、合わせてそれに付随した手続(行政命令等)を行うことができる旨の規定を併せて置くことになるだろう。具体的には、環境影響評価法附則第5条の規定などが参考になる。

 (2) 附属機関に関する経過規定

 附属機関に関する規定の改正等を行った場合に、所要の経過規定を置く必要があることがあるが、その書き方については、附属機関の性格に変更がある場合とない場合とに分類することができる。

  ア 附属機関の性格に変更がない場合

 附属機関の根拠規定に変更等があった場合、その性格に変更がない場合であっても経過規定を置くことが通例である。具体的に法令の事例を見てみると、男女共同参画社会基本法が制定され、男女共同参画審議会の設置根拠が同法となった際の経過規定は次のとおりである。   

   男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)

   附 則

 (経過措置)

第3条 前条の規定による廃止前の男女共同参画審議会設置法(以下「旧審議会設置法」という。)第1条の規定により置かれた男女共同参画審議会は、第21条第1項の規定により置かれた審議会となり、同一性をもって存続するものとする。

2 この法律の施行の際現に旧審議会設置法第四条第一項の規定により任命された男女共同参画審議会の委員である者は、この法律の施行の日に、第23条第1項の規定により、審議会の委員として任命されたものとみなす。この場合において、その任命されたものとみなされる者の任期は、同条第二項の規定にかかわらず、同日における旧審議会設置法第4条第2項の規定により任命された男女共同参画審議会の委員としての任期の残任期間と同一の期間とする。

3 この法律の施行の際現に旧審議会設置法第5条第1項の規定により定められた男女共同参画審議会の会長である者又は同条第3項の規定により指名された委員である者は、それぞれ、この法律の施行の日に、第24条第1項の規定により審議会の会長として定められ、又は同条第3項の規定により審議会の会長の職務を代理する委員として指名されたものとみなす。

  上記の経過規定は、審議会の同一性の規定のほか、その委員について所要の規定を置いているが、現在は、次のように審議会の同一性の規定を置くのみとするのが通例となっていると思われる*2。 

内閣の重要政策に関する総合調整等に関する機能の強化のための国家行政組織法等の一部を改正する法律(平成27年法律第66号)

   附 則

 (情報公開・個人情報保護審査会設置法の一部改正に伴う経過措置)

第2条 この法律の施行の際現に第22条の規定による改正前の情報公開・個人情報保護審査会設置法第2条の規定により置かれている情報公開・個人情報保護審査会は、第22条の規定による改正後の情報公開・個人情報保護審査会設置法第2条の規定により置かれる情報公開・個人情報保護審査会となり、同一性をもって存続するものとする。

 

*1:この場合には、事後の届出で足りる旨の経過規定を置くことになる。

*2:本件は、情報公開・個人情報保護審査会の所管を内閣府から総務省に移管する改正に伴い置かれた経過規定であるが、扱いは同じだと考えられる。

「新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を集中的に実施すべき事態」の表記(下)

2 内容における不自然さ

 法第31条の4第1項の新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を集中的に実施すべき事態についての要件は、新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令(令和3年政令第28号による改正後のものであり、以下「政令」という。)第5条の3第2項に次のように記載されている。

 法第31条の4第1項の新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を集中的に実施すべき事態についての政令で定める要件は、当該新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を集中的に実施しなければ、同項の特定の区域(以下この項において単に「特定の区域」という。)が属する都道府県における新型インフルエンザ等感染症の患者及び無症状病原体保有者(感染症法第6条第11項に規定する無症状病原体保有者をいう。以下この項において同じ。)、感染症法第6条第8項に規定する指定感染症(法第14条の報告に係るものに限る。)の患者及び無症状病原体保有者又は感染症法第6条第9項に規定する新感染症(全国的かつ急速なまん延のおそれのあるものに限る。)の所見がある者(以下「感染症患者等」という。)の発生の状況、当該都道府県における感染症患者等のうち新型インフルエンザ等に感染し、又は感染したおそれがある経路が特定できない者の発生の状況、特定の区域における新型インフルエンザ等の感染の拡大の状況その他の新型インフルエンザ等の発生の状況を踏まえ、当該都道府県において新型インフルエンザ等の感染が拡大するおそれがあると認められる場合であって、当該感染の拡大に関する状況を踏まえ、当該都道府県の区域において医療の提供に支障が生ずるおそれがあると認められるときに該当することとする。

 政令第5条の3第2項は、「……場合であって、……とき」とあるように仮定的条件を重ねて用いる文章となっているが、要は「当該都道府県において新型インフルエンザ等の感染が拡大するおそれがあると認められる場合であって、当該都道府県の区域において医療の提供に支障が生ずるおそれがあると認められるとき」に該当することを要件としている。

 しかし、新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置は、都道府県の区域のうちさらに特定の区域について行うものであり、当該特定の区域における新型インフルエンザ等のまん延が当該特定の区域の属する都道府県における医療の提供に支障を生じる場合を要件とすべきだろうから、次のような表現とすることが考えられる。

 法第31条の4第1項の新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を集中的に実施すべき事態についての政令で定める要件は、当該新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を集中的に実施しなければ、同項の特定の区域(以下この項において単に「特定の区域」という。)における新型インフルエンザ等の感染が拡大するおそれがあると認められる場合であって、当該感染の拡大が当該特定の区域が属する都道府県における新型インフルエンザ等感染症の患者及び無症状病原体保有者(感染症法第6条第11項に規定する無症状病原体保有者をいう。以下この項において同じ。)、感染症法第6条第8項に規定する指定感染症(法第14条の報告に係るものに限る。)の患者及び無症状病原体保有者又は感染症法第6条第9項に規定する新感染症(全国的かつ急速なまん延のおそれのあるものに限る。)の所見がある者(以下「感染症患者等」という。)の発生の状況、当該都道府県における感染症患者等のうち新型インフルエンザ等に感染し、又は感染したおそれがある経路が特定できない者の発生の状況その他の新型インフルエンザ等の発生の状況を踏まえ、当該都道府県の区域において医療の提供に支障が生ずるおそれがあると認められるときに該当することとする。

 しかし、いずれにしろ中身は抽象的であり、意味があるとは思えない規定である。要件は具体的に定めるのではなく、総合的に判断することとしたいのだろうが、そうであれば、せっかく学識経験者を委員とする新型インフルエンザ等対策推進会議を法に位置付けたのであるから、当該会議の意見を聴くようにすれば多少抽象的であっても許容されるのではないかと感じる。

「新型インフルエンザ等まん延防止重点措置を集中的に実施すべき事態」の表記(上)

 「新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を集中的に実施すべき事態」がよく分からない。その理由は、単純に書き振りからくる分かりにくさと内容における不自然さがあるように思う。

1 書き振りからくる分かりにくさ

 新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を実施すべき事態に関する規定は、新型インフルエンザ等対策特別措置法(令和3年法律第5号による改正後のものであり、以下「法」という。)第31条の4第1項に規定されているが、この規定を新型インフルエンザ等緊急事態に関する規定である法第32条第1項の規定と比較してみる。

法第31条の4第1項

 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等(国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものとして政令で定める要件に該当するものに限る。以下この章及び次章において同じ。)が国内で発生し、特定の区域において、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある当該区域における新型インフルエンザ等のまん延を防止するため、新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を集中的に実施する必要があるものとして政令で定める要件に該当する事態が発生したと認めるときは、当該事態が発生した旨及び次に掲げる事項を公示するものとする。

 (1)~(3) (略)

法第32条第1項

 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等が国内で発生し、その全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態(以下「新型インフルエンザ等緊急事態」という。)が発生したと認めるときは、新型インフルエンザ等緊急事態が発生した旨及び次に掲げる事項の公示(第5項及び第34条第1項において「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」という。)をし、並びにその旨及び当該事項を国会に報告するものとする。

 (1)~(3) (略)

  現在なされている緊急事態宣言の解除後には新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を実施すべき事態に移行するといった報道も見受けられるが、そうした場合を想定した書き方になっていないように思われる。ただ、それは触れないこととする。

 法第31条の4第1項は、私には読みにくい文書だが、その原因は2点あるように感じる。

 1点目は、法第31条の4第1項の書き振りは当然法第32条第1項を参考にしているのだろうが、法第32条第1項の「おそれがあるもの」の「もの」は「事態」を指しているのに対し、法第31条の4第1項は「おそれがある……まん延」となってしまったことによる不自然さである。

 2点目は、「……防止するため、」という文言はその直後の「新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を集中的に実施する必要がある」にかかっていくのであろうが、読点で文章を切ってしまっているため、どこにかかっていくのか分かりにくくなっている点である。

 以上の点を考慮して、次のように書けば少しは分かりやすくなるのではないかと思う。

 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等……が国内で発生し、特定の区域において、それがまん延すると国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあり、そのまん延を防止するためには新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を集中的に実施する必要があるものとして政令で定める要件に該当する事態が発生したと認めるときは、当該事態が発生した旨及び次に掲げる事項を公示するものとする。

 (1)~(3) (略)

 

自治体の機関

1 機関の性格等

機関名 性格 任命権 規則・規程制定権*1 事務局*2 附属機関の設置 所属職員への事務委任
首長 執行機関(地自法138条の4第1項・139条) 有(地公法6条1項) 規則(地自法15条1項) 可(地自法138条の4第3項) 可(地自法153条1項)
教育委員会 執行機関(地自法138条の4第1項・180条の5第1項1号、地教行法2条) 有(地公法6条1項) 規則(地教行法15条1項) 必置(地教行法17条1項) 可(地自法138条の4第3項) 可(地教行法25条)
公安委員会 執行機関(地自法138条の4第1項・180条の5第2項1号、警察法38条1項) 有(警視総監・本部長)(地公法6条1項) 規則(警察法38条5項) 警視庁・警察本部(警察法47条1項) 可(地自法138条の4第3項)
選挙管理委員会 執行機関(地自法138条の4第1項・180条の5第1項2号・181条1項) 有(地公法6条1項) 規程(地自法194条) 不可(地自法191条1項参照) 可(地自法138条の4第3項) 可(地自法193条・153条1項)
監査委員 執行機関(地自法138条の4第1項・180条の5第1項4号・195条1項) 有(代表監査委員)(地公法6条1項) 都道府県:必置、市町村:任意(地自法200条1項・2項) 可(地自法138条の4第3項) 可(地自法201条・153条1項)
人事委員会(公平委員会) 執行機関(地自法138条の4第1項・180条の5第1項3号、地公法7条1項~3項) 有(地公法6条1項) 規則(地公法8条5項) 人事委員会:必置(地公法12条1項)*3公平委員会:不可*4 可(地自法138条の4第3項) 特定の事務について事務局長に対してのみ可(地公法8条3項・4項)
労働委員会 執行機関(地自法138条の4第1項・180条の5第2項2号、労組法19条の12第1項) 規則(労組法26条2項) 必置(労組法19条の12第6項・19条の11第1項) 可(地自法138条の4第3項)
その他の委員会 執行機関*5 規程:収用委員会(土地収用法59条)、農業委員会(農委法34条) 不可*6 可(地自法138条の4第3項)
議会 議事機関 有(議長)(地公法6条1項) 会議規則・傍聴規則(地自法120条・地自法130条3項) 都道府県:必置、市町村:任意(地自法138条1項・138条2項) 不可
公営企業管理者 長の補助機関(地公企法7条)*7 有(地公企法15条) 管理規程(地公企法10条) *8 可(地公企法14条) 可(地公企法13条2項)
会計管理者 長の補助機関(地自法168条1項) 不可 可(長が行う。)(地自法171条4項)

2 機関相互の関係

 (1) 事務の委任・補助執行

  ア 首長の事務の委任・補助執行

    対行政委員会(委員):可(地自法180条の2)

    対管理者:可(補助期間である以上当然)

  イ 行政委員会(委員)の事務の委任・補助執行

    対首長:可(地自法180条の7)

    対行政委員会(委員):不可

    対管理者:想定されない。

  ウ 管理者の事務の委任・補助執行は、想定されない。

  エ 議会は、その事務の委任等及び他機関の受任等のいずれも不可

  (2) 職員の兼務

   いずれも可(長と行政委員会(委員)は、規定あり(地自法180条の3)。その他は解釈によるが、長と管理者は補助期間である以上当然であり、その他は兼務が認められている趣旨による 。) 

*1:規則・規程の制定権がなくても、告示を発出することは可能と一般的に考えられている。

*2:名称必置と考える必要はないと思われる。なお、事務局が設置不可の機関であっても事務局という名称の組織を置いている例はある。

*3:都道府県及び政令指定都市以外は任意:地公法12条4項

*4:競争試験等を行う公平委員会については設置可:地公法12条6項

*5:収用委員会(地自法138条の4第1項・180条の5第2項3号、土地収用法51条1項)、海区漁業調整委員会(地自法138条の4第1項・180条の5第2項4号、漁業法13条1項)、内水面漁場管理委員会(地自法138条の4第1項・180条の5第2項5号、漁業法171条1項)、農業委員会(地自法138条の4第1項・180条の5第3項1号、農委法3条1項)、固定資産評価審査委員会(地自法138条の4第1項・180条の5第3項2号、地方税法423条1項)。

*6:収用委員会(土地収用法58条1項参照)、海区漁業調整委員会(漁業法137条6項参照)、内水面漁場管理委員会(漁業法137条・137条6項参照)、農業委員会(農委法26条1項参照)。

*7:地方公営企業法及び地方公共団体の財政の健全化に関する法律(公営企業に係る部分)の施行に関する取扱いについて」(昭和27年9月29日自乙発第245号)記第一章第二節二(一)参照

*8:組織の性格上、事務局を置くことは想定できないが、地公企法14条に基づき「企業局」、「企業庁」といった名称の組織を置くところがある。